日頃何気なく接しているエンターテインメントが、考え方に影響を与えることもあります。影響力の大きいエンタメ作品は、時代ごとにジェンダー観をどう反映してきたのでしょうか。

今回、注目するのは「お笑い」。これまで子どもに見せたくない番組といえば、お笑い番組の名前が挙がっていたが現在は女性芸人の活躍が目覚ましく、差別的なネタや、容姿をけなすネタなどには批判の声が上がるようになりました。お笑いの現状は、シーンを見つめ続けてきた5人の目にはどう映っているのだろうか。

お話を伺ったのは……
児島気奈さん、紺野ぶるまさん、サンキュータツオさん、たかまつななさん、西澤千央さん

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女性芸人が珍しくない時代、
発想力や表現力が笑いの鍵に

児島気奈さん

私は1999年からお笑いライブのスタッフとして働きはじめ、2004年にK-PROを立ち上げました。その当時は「芸人さんと付き合いたいからやっているんじゃないの?」と下心があるように疑われることもありましたが、これまで続けてきてやっと認めてもらえたのかなと思います。

以前は今ほど女性の芸人さんの数は多くなく、10組が出るライブで1組いるかいないか。数少ない女性たちは男性と同じくらい体を張って、ようやく認められる。髪を剃るなど、見た目を無理矢理男性に寄せてネタをやる人が多かったと思います。舞台上でも「お前は女なんだから」や「女が前に出るな」といったツッコミで笑いが起こることもありました。現在は女性の芸人さんも増えてきて、男性が女性に対して女性であることをいじるという笑いの取り方はほとんどありません。そういういじりでお客さんが笑わなくなってきたんです。ライブシーンは、お客さんの反応をダイレクトに肌で感じる場だからこそ、潮流を敏感に読み取り男女関係なく切磋琢磨できる世界なんです。

男性は「モテたい」という理由でお笑い芸人を目指す方が今も昔も一定数いますが、女性は「自分が面白いということを見せたい」、「人を笑わせたい」という人が多いです。人を笑わせるのは男性、という変な思い込みがなくなってきたのでは。各々の発想力や表現力で戦う時代になり、純粋なお笑いの世界になってきたと感じています。

児島気奈(こじま・きな)
お笑いライブやイベントを主催する制作会社K-PROの代表。年間1000本以上のライブを開催。若手の発掘にも力を入れている。今年春には、お笑い専門の劇場「西新宿ナルゲキ」をオープンさせた。

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結婚しても変わらず自分が面白いと
思うものを追求したい

紺野ぶるまさん

なんでも男性器で解くという「ちんこなぞかけ」をはじめたのは、なぞかけライブに出演したとき。あるお題に対してどうしても答えが浮かばずに、とっさに出てしまったんです。それが会場でとてもウケて、それから男性器で解くことを求められるようになりました。私自身むやみに下ネタを言っているとは思っていなかったし、なぞかけのお題に対して、きちんと同音異義語で解くという芸をやっているという自負がありました。しかし事務所や周りの芸人たちからは「紺野ぶるまはもうヨゴレ」と見られ、手を出してはいけない領域に行ってしまったかのように言われました。

周りが見方を変えてくれたのは、伊集院光さんや、吉田照美さんが「これはエロではなく、難しい芸事なんだ」と褒めてくれたとき。手のひら返しのようにコロッと意見を変えてくれました(笑)。視聴者からのクレームもほとんどなく、あったとしたらそれはきちんと解けていないとき。「わざわざ男性器で例える必要があったか?」と下品に見られてしまう。きちんと解けていれば、必然性が生まれ感心してもらえることもあります。

これまで女性芸人は結婚、出産するとネタではない方向にシフトチェンジする方が多かったと思います。私は19年に結婚しましたが、今後もなぞかけを続けます。今の自分でどうやって笑いを取れるか。私が持っているもので精一杯人を笑わせることが、芸人としての仕事だと思っています。

紺野ぶるま(こんの・ぶるま)
なぞかけで人気を博したピン芸人。「女芸人No.1決定戦THE W」では2017年から3年連続ファイナリストに。最新著書に『「中退女子」の生き方 腐った蜜柑が芸人になった話』(廣済堂出版)。