2021.10.19
# 学校・教育

山中伸弥教授「子供時代の“ほったらかし”が僕を育てた」

山中教授、同級生の小児脳科学者と子育てを語る(1)
これまでいくつかの書籍を刊行してきたノーベル賞科学者・山中伸弥教授だが、「子育て」について書いた​本はまだ一冊もない。どうすればわが子が山中教授のように育つのか?を知りたい全国の親御さんに届ける子育て本『山中教授、同級生の小児脳科学者と子育てを語る』が10月22日発売。
神戸大学医学部時代の同級生で、山中教授の「勉学の恩人」でもあった小児脳科学者・成田奈緒子医師が、山中教授がこれまで語ったことのない本音を引き出します。

子ども時代は家でひとりで過ごす時間が長かった

山中 今回は子育てがテーマということやけど、まずは自分がどんなふうに育ったかを話しましょうか。僕の母親はね、家業の工場の経理の仕事を手伝っていました。今でいうワーキングマザーですね。忙しかったせいもあると思うけど、あれこれ言われたことはなかったかな。
成田 怒られたことも?
山中 いや、それは当然あったよ。一番怒られたのは、コタツ台を火の海にしたときかな。
成田 火の海!?

Photo by iStock
 

山中 僕、昔から科学が大好きで。で、そういう雑誌、ほら子ども向けの科学雑誌みたいなのがあって、それに毎回付録がついてくるタイプの。その付録でいろいろ実験できた。そのうちのひとつが、アルコールランプの実験でした。子ども向けの雑誌にあんなリスキーな付録がついてくるなんて、今じゃ絶対ありえないと思いますが。
成田 ああ、もう、先が見えてるやん。
山中 まあ、そう言わずに聞いてよ。
成田 はい、もちろん(笑)。
山中 とにかく、それをコタツの上でやってたら、入れ物が見事にコケまして。コタツ台にこぼれたアルコールにバーッと炎が広がった。本当にコタツの上が火の海になったんです。
成田 おっかないねえ。それ、ひとりでやってたんですか?
山中 いや、母親がその日はたまたま家にいて、ずいぶん怒られたことを覚えてます。
成田 良かったねえ、大火事にならずに済んで。
山中 いや、ほんまに。
成田 学研の月刊誌『科学』と『学習』ですよね。思えば私ら、小学生で一度、理系か文系を選ばされてたんだね。科学には化学が含まれていた。山中君が火の海にした回はたぶん「化学」だ。毎号付録が楽しみでしたね。私はそれよりも危険性のない遊びをしたかな。卵の硬い殻の中に薄皮あるじゃない? あの薄皮を取り出して風船みたいにして遊んだり、「マシュマロを作ろう」みたいなことをやりましたね
山中 やっぱ、奈緒ちゃんのほうがスマートやな。あ、今日は公の場なので「成田さん」でいきましょう。僕のことは「山中君」でよいので。
成田 ありがとうございます。で、山中君はやっぱ、小さいときから化学、大好きだったんだね。将来の姿がすでに見えてますね。お母さんも、火の海にされたけど「科学の雑誌はもう買ってあげません」とはならなかった。息子の好きなことがちゃんと見えてらしたんだ。で、お母さん、そのときたまたま家にいたってことは、普段はいなかったの?
山中 両親は朝出かけたら夕方まで帰ってこないから、それまではほぼ僕ひとりでした。姉とは年齢が8歳離れていたから、家ではひとりで過ごすことが多かったかな。
成田 当時は専業主婦の家庭が多かったけど、今は共働きが多い。育った環境はいまどきの子どもだったんですね。
山中 そうやね。それに母はそんなに教育ママではなくて。勉強しなさいと言われたこともなかった。日ごろから「なんでも自分でしなさい」と言ってたから、子どもの自主性を育てようとしてたのかな。

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