子どもたちが子どもらしく育つ権利を守るため

創設には壮絶なドラマがありました。スタッフのともこさんが語ります。

「私の子どもも葭田の子どもも、もともと同じ幼稚園に通っていました。園長はしっかりした教育理念をもつ方で、安心して預けていたんです。でも、ある日突然理事長が、これからは英語教育に力を入れるなどと言い出して、園の教育方針を180度変えてしまいました。園長以下職員も総入れ替えでした。方針転換に納得できない数人のママ友で、本当に何にもないところから自分たちの手で、急遽ようちえんをつくることにしたんです」

ともこさんは幼稚園教諭の資格をもっていました。葭田さんも大学では幼児教育を学び、保育士としての勤務経験がありましたが、当時は中学校の相談員として勤務していました。葭田さんが振り返ります。

「いまから思うと、あれは権利喪失への直観的な抗いでした。子どもたちが子どもらしく育つ権利が失われることへの
 
以下、葭田さんの語りです。

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子どもたちに必要なのは「3つのB」

自然の刺激は淡くて、飛び抜けたものがありません。だから、耳を澄ましてみると、スミレとリイサが草を食む音まで聞こえてきます。
  
静かな時間をおうちでも守られている子どもは、そういう気づきがぜんぜん違います。だって、風の音とか、『風の又三郎』の表現のように生き物みたいに聞こえてくるんですよ。ここの森の中で、冒険者になりきったら、ゴーッという風の音なんかに立ち向かう勇気が本当に試されます。そういう体験があったうえで『ナルニア国物語』を読んだりすると、物語の世界に入り込めるわけで。
  
不思議だなとか美しいなって感覚もやっぱりそこで。中高生になって机上で勉強したって、からだの中には入っていかないでしょう。安心でおいしい食べ物はうんこと死骸でできているということを、実感してほしいと思っています。そういう感覚的な土台があってこそ、のちに学んだ知識や技術を正しく使えるひとになるはずです。

こんなようちえんに入れてあとあと大丈夫なんだろうかと不安に思う親御さんもいるんだと思いますけれど、実際にここで遊ぶ子どもの姿を見ちゃうとね。
いろんな園を見て回った親御さんが「いつもは私にまとわりついて離れないのに、ここではなんで私の元を離れてバーッと走って行けたんだろう」なんて気づいてくれたりするんですよ。それはこの雰囲気が迎え入れているんだと思うんですよね。自然って差別しないし、試験はないし、誰でもどうぞって。

子どもたちが自己を手放さずに生きるために、体験してほしいことがあります。
(1)ぼーっとする、(2)没頭する、(3)冒険する、「3つのB」です。

撮影/おおたとしまさ