もう一つの質問に「困っている見知らぬ人、あるいはまったく知らない他人を助けたことがあるか」というものもあるが、もしかすると日本人は、見知らぬ人ではなく、家族や友人、地域の住民など、知り合いしか助けない「内輪にやさしい国民」なのかもしれない。

だが、これも孤独死の増加や自己責任論の高まりなどから推測するに、そうとは言いきれない。
実際、地域の住民とのつながりに関して言えば、内閣府が2020年に行った「社会意識に関する世論調査」によると、10年前に比べて、地域の住民の間で「困った時に助け合うのが望ましい」と回答した人は8ポイント減少しており、逆に「世間話をする程度の付き合いが望ましい」と答えた人は14ポイント、「挨拶をする程度の付き合いが望ましい」も8ポイント増加している。
また、仮に日本が「内輪にやさしい国」だったとしても、日本人はなぜ他の国の人と比べて見知らぬ人にやさしくないのか、という疑問は残る。
「善きサマリア人の実験」から見えたもの
もちろん、他人を助けたがらないからといって、日本人が悪い人というわけではない。よい人でも人を助けないことはあるからだ。
社会心理学に有名な「善きサマリア人の実験」というものがある。プリンストン大学の心理学者ジョン・ダーリーとその学生のダニエル・バトソンが行った実験で、彼らは神学を学ぶ学生たちに新約聖書の一節(人助けのお話)についての説教を近くのビルに行って披露してくる、というミッションを与えた。