「音楽なら初めて出会った人とも心で通じ合える」

水泳とそろばんは、ある程度のスキルが身についたところでやめてしまったが、ピアノは、習えば習うほど楽しくなる一方だった。「音楽で生きていこう」と思ったのは12歳のとき。ピアノは疋田先生のもとで習うほか、ヤマハで作曲の勉強もしていた上原さんは、台湾で開催されたヤマハのジュニア・オリジナル・コンサートに出演した。各国のヤマハの生徒が集まり、オリジナルの楽曲を披露する演奏会だった。

「言葉の通じない場所だったのに、いざピアノを弾き始めたら、会場にいる人たちと一つになれた気がしました。目の前にいる人たちが、どんどん笑顔になっていった。音楽でなら、初めて出会った人とも心で通じ合えることに、ものすごく感動しました」

Photo by Aya Kishimoto
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17歳のときに、今年2月に逝去したチック・コリアさんと共演したエピソードも、もはや上原さんの伝説の一つだ。浜松から、東京のヤマハまでレッスンを受けにいったとき、たまたま近くのスタジオで、チック・コリアさんが次の日のコンサートのリハーサルをしていた。チックさんに「何か一曲弾いてみて」と促され、オリジナル曲を披露すると、「じゃあ、即興しよう」と言って、スタジオにあった2台のピアノで演奏した。それだけでなく次の日に、彼のコンサートに誘われ、大手町の日経ホールで、即興の掛け合いをしたのである。

「ピアノを前にすると、つい緊張よりも、“楽しそう!”という好奇心が勝つんです。あまり難しくは考えない。それは多分、生まれ持った性格だと思います。3〜4歳のときに、家族で市民プールに行って、私はまだ泳げないのに、『水、楽しい!』と思ったら、親の目を盗んですぐ深いプールに飛び込んじゃうような子供だったらしいです。それで、溺れているのに気付いて両親が助けに行く。当時から、後先考えずに飛び込むタイプだったんですね(笑)」