2021.10.17
# エンタメ

韓国発の大人気番組『イカゲーム』と『ガルプラ』…両者には、若者を虜にする共通の「しくみ」があった…!

飯田 一史 プロフィール

『イカゲーム』は借金まみれの中年を主人公にして人生の悲哀を感じさせる設定ゆえに幅広い年齢層から支持されているが、デスゲーム/サバイバルものは2010年代以降は小学生向けの児童文庫では定番の人気ジャンルであり、中高生向けでも金沢伸明『王様ゲーム』や山田悠介作品などが根強く読まれ続けている。

デスゲーム、サバ番、離別確定悲恋ものはいずれも死、別れ、脱落が必ず起こることを受け手に先に示し、別離の場面をこれでもかと煽る演出を施す点が共通している。そしてこういう「しくみ」「しかけ」に若年層は反応しやすい。

思春期の脳では、情動を司る扁桃体などの大脳辺縁系(脳の原始的な部分)のほうが理性を司る前頭前野(脳の新しい部分)よりも先に発達するために、若者は感情のアクセルがブレーキよりも効きやすく、得られる報酬を損失のリスクよりも過大に見積もりやすい。ダニエル・カーネマンが言うところの自動的で速い処理の「システム1」と意識的で遅い処理の「システム2」では、若者はシステム1の方が優位であり、感情を刺激するものに反応しやすい状態にある。

だから、手っ取り早く、かつ、ほぼ確実に強い情動を喚起することが観る前からわかっているデスゲームやサバ番、離別確定ものに吸い寄せられてしまうのだと考えられる。

 

しくみの力を認識した上で楽しむべき

もちろん、「しくみ」があればどんなものでもヒットするわけではない。

キャラクターに魅力がない、または極限状態で生じうる感情の解放を通り一遍以上のもので描かないデスゲームはだいたいダメだし、最初のうちはよくてもだんだんグズグズになって尻すぼみになってしまうものもある。

サバ番でも出演者の魅力が引き出しきれなかった場合や、審査側やメンター、コーチの発言や振る舞いが高圧的であったり、評価基準が不可解、あるいはミッションに必然性が感じられなかったり、逆に意外性がなさすぎたりする場合には視聴者は萎えてしまう。また、イヤな気持ち、暗い気持ちになりたくて観ているわけではないのに、張り詰めたトーンで若い参加者のメンタルを追い込む場面ばかりをやたらと圧迫感のある画面づくりのもとに見せられても、見るのが辛くなってしまう。

とはいえ、魅力的な参加者をはじめとする「要素」が揃ったときには、視聴者に強い感情をインスタントに引き起こす「しかけ」はきわめて効果的に作動する。

大人であればこのことを自覚しながら視聴した方が、感情をいたずらに振り回されずに済む。

あるいは、自分の身近に熱を上げすぎている若い人がいるなら、こうした背景を伝えて少しクールダウンを促すことも必要だろう。とくに10代は発達の関係でもともと感情がかき乱されやすい年頃であり、「しかけ」に引っかかりやすく、また、制作者のターゲットにされやすいからだ(サバ番放送・配信期間中にその番組や出演者名のタグで検索するとSNSが「治安が悪い」状態になってギスギスしていることが散見されるが、それは視聴者の感情を強く揺さぶろうという制作者の「狙い通り」のことが起こっているにすぎない)。

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