SOSを出せない子どもたち

来年、政府は孤独の実態把握調査をおこなう予定だ。どういう実態が見えてくるかは調査してみたいなことには分からないが、少なくとも『あなたのいばしょ』を含め、相談窓口はものすごい勢いで逼迫していっているのは確かだ。

「その理由は、これまでの支援制度や社会福祉の体系などが、日本の場合、“家族がある”という前提で作られていることにもあると思います。他人に頼りづらいため、家の中で頼れる人がいなければ家を出ざるを得ない、ということがずっと昔から続いているんです。

家族というのはそれぞれに役割があり、無意識に相互に影響し合い、作用し合って、円満な家庭というものを作り上げていっています。これを家族ダイナミクスと言いますが、それくらい非常に微妙なバランス関係で成り立っているんですね。日本社会は、そんな家族ダイナミクスを前提に形成されてきたところがあるので、家族に頼る人がいないときに孤立しやすい、というひずみが今出てきています。“神待ち行為”なんて言葉もありますが、今の支援制度のままではそういう行為をせざるを得ない子供たちが増えていく、と感じています」

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とくに自殺に関しては、子供たちはなかなかSOSを出せていないのが現実だ、と大空さんは語る。

「子供が学校でSOSを出せる相手がスクールカウンセラーです。そのスクールカウンセラーを設置している学校数は、平成7年時点では全国で154か所でした。これが昨年は3万550か所に。つまり、この30年弱で約200倍にも増えているんですね。だけど、平成7年の若者の自殺者数が149人なのに対して、去年は499人。3.5倍くらい増えているわけです。スクールカウンセラー、つまり頼れる人を大きく増やしてきたし、生徒数も減っているのに、子供たちの自殺は増えているということ。

これは、今の社会は子供たちがSOSを出しづらい、ということなんだと思います。まだまだ相談窓口は電話が中心。でもスマホ世代の今の子供たちは、電話を使うことに慣れていません。そんな中で『電話してください』と言われても難しい。支援の取り組み方と、子供たちの現実とが乖離していると思うんです。

だから我々は、このチャット相談の仕組みを少しでも広げていきたいと考えています。支援の方法は、多様性があったほうがいい。まだまだ黎明期ですが、チャットも一つの有用な選択肢になり得ると思うので、我々としてはとにかくこの活動を続けていくに尽きる、と思っています」