相談窓口として大切にしていること

大空さんは、たまたま信頼できる大人に出会えた。でもそれは、あくまで偶然の出会いだ。この先生に出会えていなければ、今こうして立ち直れていたかは分からない。そんなふうに、頼れる人に偶然出会えた人は救われて、出会えなかった人は救われない、という社会ではいけない――。そこから「24時間365日、いつでも頼れる仕組みを作りたい」と考えるようになり、『あなたのいばしょ』を立ち上げるに至ったという。

「活動としては、24時間365日チャットで相談に乗る。基本的にはそれだけです。虐待やDVなど緊急の場合は警察と連携して対応にあたることもありますが、基本は“傾聴”ですね。

相談してくるのは、年代で言うと29歳以下の若い人が多い。そして7割近くが女性です。相談内容として多いのは、『自ら命を絶ちたい』というものです。ただ、それ以外にもDVや虐待、経済的困窮、いじめ、メンタル不調など、本当に様々。『死にたい』とストレートに言う人もいれば、ただ思いを書き連ねる人まで、表現方法もこれといった傾向があるわけではありません。

ですが皆さん、死にたいという気持ちは一緒。それを僕たちはそのまま受け止め、共感を示し、その人自身もしくはその人がこれまで頑張ってきたことを肯定し認めてあげる。これが、僕たちが大事にしている“傾聴”です」

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折しも窓口を立ち上げた2020年3月は、ちょうどコロナウイルスが広がり始めた時期。ストレスや孤独感が増したせいか、相談件数はものすごい勢いで増えていった。

とくに問題が“孤独”の場合、持続期間が長ければ長いほど悪化することが分かっている。もともと何か一つのストレス源を持っていて、それ自体はたいしたことがなかったとしても、別のストレス源が出現したときに、希死念慮、自殺念慮が生まれたりする。それまでは『へっちゃらだよ』という人でも、突然に近い印象で追いつめられるのだという。

「僕自身もそうでしたが、そんなときに『頼れる人がいる』という安心感は、人間が本来持っている“立ち直る力”を呼び起こしてくれる可能性がある。僕にとっての担任の先生との出会いは、まさにそのきっかけになったと思うんです。

『あなたのいばしょ』に相談にくる人も、“相談にくる”というアクションを取っている。わざわざ自分で窓口を調べて、自分の気持ちを聞いてもらいたいとチャットに打ち込んでいるわけです。これは援助希求行動と言って、人間の持つ本能。ここで話を聞いてもらうことで、立ち直るきっかけを掴んでもらう。我々はそういうセーフティーネットなんです。

よく『チャットだけでは問題は解決しないですよね』と言われますが、当然そんなことはできないし、何よりおこがましい。もちろん解決を求めている人もいますけど、この場で解決したからといって、その人が再び問題を抱えないかといったらそんな確証もありません。だからまずは人が本来持っている、誰かを頼る力、つながる力を使えるきっかけを作る。僕たちができることはそれだけです」