人類が60年で絶滅させた謎の鳥が17世紀の日本を訪れていた!

「幻の鳥目線」で見たインド洋のふしぎ
川端 裕人 プロフィール

磁石にくっつく奇天烈な生き物

母船の名をとって名付けられた最初の海底温泉「かいれいフィールド」からは、のちにインド洋深海底固有の不思議生物、スケーリーフットが見つかった。鉄(硫化鉄)の鱗を持つ、奇天烈な巻き貝だ。

磁石にくっつく動物というのは空前絶後で、ただその点だけをとっても大きく報道され、今では深海底のカリスマ生物のような位置づけにすらなっている。

【写真】スケーリーフットスケーリーフット。左上が「かいれいフィールド」、右上は「ソリテアフィールド」で採取された個体(©Chong Chen)

さらに、日本チームが見つけた海底温泉は、2つ目は「ドードーフィールド」、3つ目が「ソリテアフィールド」と名付けられた。それぞれ近所の島にいた絶滅鳥のドードー類にリスペクトを払った命名だ。

そして、ソリテアフィールドからは、鱗に硫化鉄を含まない白いスケーリーフットが発見されている(きっとドードーフィールドに別のスケーリーフットがいるにちがいないとぼくは夢想する)。

ドードーからスケーリーフットへ

深海の熱水環境の生物群集は、生命の起原の探求においても注目されている貴重な存在だ。また、生息域が極端に限定されることから、シンプルに考えて絶滅が心配される。

そこで、国際自然保護連合のレッドリストでは、2018年、スケーリーフットを「絶滅危惧(EN)」とした。ドードー類は、残念なことに(そして多くの人が知るとおり)、絶滅が危惧される前に地上から姿を消してしまった生き物なので、1988年に初めてレッドリストに記載されて以来、一貫して「絶滅」と書かれている。

もしドードー類がなんらかの遺志を伝えることができるなら、同じインド洋の近隣海域に生きる生き物として、「スケーリーフットたちよ、きみたちはこっちに来るな」と、語りかけるに違いない……。

そんなことを想像していると、だんだん胸が熱くなってきた。近代の絶滅の最も有名な事例であるドードー類から、生命の謎を握る深海底の熱水生物スケーリーフットへと、一直線にベクトルの矢印が描かれるというのは、いかに絶滅や絶滅危惧をめぐる残念なことであっても、大いに心揺さぶられることなのである。

【写真】白ドードー実際にはいなかったことがわかったレユニオン島の白ドードー(白スケーリーフットの連想として)。『絶滅鳥類』(ウォルター・ロスチャイルド、1907年)より

以上、『インド洋』について、ぼくの頭の中にずっと棲んでいるドードー類との兼ね合いがある部分を中心に紹介した。自分の関心に引き寄せた手前味噌なものであることは自覚している。でも、本書で描かれたインド洋が、それだけ懐の深い存在であることはまぎれもない事実なのである。

それは、さまざまな局面で、「わたしたち」とつながる、遠くて近いミステリーであり、あえていえばドードー類もその一部、なのだ。

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