人類が60年で絶滅させた謎の鳥が17世紀の日本を訪れていた!

「幻の鳥目線」で見たインド洋のふしぎ

人類との遭遇から、わずか60年あまりで絶滅に追い込まれた生き物がいます。 最初の記載が1598年、最後に目撃されたのが1662年。

インド洋の西端に浮かぶ、天敵のいない楽園・モーリシャス島に暮らしていたその生き物の名前は「ドードー」。

大型で空を飛べず、地上に巣をつくる性質を持っていたことから、人類が持ち込んだブタ、カニクイザル、ネズミ等によって卵を食い荒らされたりして追い詰められたと言います。

驚くことに、そのドードーが江戸期の日本を訪れていたことが最近になって判明しました。その謎を追う川端裕人さんが、ドードーのふるさと「インド洋」の魅力を語る特別レポート。

絶滅した鳥の故郷

書店でブルーバックスのコーナーに立ち止まると、『インド洋 日本の気候を支配する謎の大海』(蒲生俊敬)が、ぱっと輝くように目に入ってきた。それどころか「呼ばれている」ようにも思えて購入、その日のうちに読了した。

では、なぜ、インド洋に「呼ばれている」と感じたのか。

それは、ぼくがこの数年、インド洋マスカリン諸島の絶滅鳥類であるドードー類をめぐるノンフィクションに取り組んできたからだ。

いよいよ初校という段階にまでこぎ着けたものの、「ドードーの故郷、インド洋についてまったく知らないぞ」と感じることしきりだった。だから、気軽な構えで誘ってくれる本書を手に取るのは必然で、結果、自分の狭い関心をはるかにこえて、楽しむことができた。

著者は、インド洋で8回、のべ300日の調査経験を持つ海洋化学者である。自らが参加したチームの手に汗握る調査研究を要所でからめつつも、「インド洋とはなにか」という大きなテーマに挑んで、見取り図を提供してくれる。

海洋と気象、大陸移動と火山活動、インド洋深海底探査とそこで見つかった奇妙な生物たち、さらには人間社会との密接な関係……。通読すると、「インド洋を抜きにして地球は語れない」という著者の言葉が、説得力をもって迫ってくる。多くの興味深いトピックがあるのだが、ぼくが特に関心を持った部分を中心に紹介したい。

その際のキーワードは、つまり「ドードー」だ。

それは本書の大きなテーマとはいえず、せいぜいサイドネタにすぎないはずなのだが(「インド洋から消えた怪鳥『ドードー』を知っていますか?」と題したコラムが収録されている)、この6、7年、連日ドードー類について考えてきたぼくにしてみると、かなりの濃度のドードー本であり、その切り口で、懐の深い本書の魅力の一端を紹介できると思うのである。

出島にドードーが来ていた!

というわけで、まずドードー類について簡単に触れさせてほしい。

ドードー類は、西インド洋マスカリン諸島にかつて生息した飛べないハト科鳥類だ。モーリシャス島のドードー、ロドリゲス島のソリテアの2種がいる。

【図】マスカリン諸島略地図マスカリン諸島の位置を示した略地図。マスカリン諸島は、レユニオン島(フランス海外領)、モーリシャス島(モーリシャス共和国)、ロドリゲス島(モーリシャス領)のほか、カルガドス・カラホス諸島、アンブル島(いずれもモーリシャス領)などからなる

そのうち特にドードーは、『不思議の国のアリス』や『ドラえもん』に登場するなど知名度が高い。ユーモラスなルックスと、絶滅しているという悲劇性、さまざまな文化的な媒体で引用されてきたコンテキストの豊穣さが相まって、なんともいえない魅力を感じる人が多いのだと思う。

『不思議の国のアリス』ビュフォンの『一般と個別の博物誌』で描かれたドードー左は、『不思議の国のアリス』(1911年版)に登場するドードー。ジョン・テニエル画。右は、ドードーとソリテアの図(ビュフォンの『一般と個別の博物誌』より

そんなドードーが1647(正保4)年、生きた状態で長崎の出島にもたらされていたという証拠が見つかったのは、つい最近、2014年のことだった。

オランダとイギリスの研究者が、オランダ東インド会社の記録を調べるうちに、ドードーが日本に来ていたことを見出した。時期的に、故郷のモーリシャス島の外に出た最後の一羽だったかもしれないという。

ぼくは、その話を聞いた瞬間に、「うわぁ」と驚き、その後、どこに行ったのか知りたくなった。

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