「分配政策」だけでは、「20年後の生活水準」がいまより2割低下する

日本に必要なのは相当な生産性向上政策
野口 悠紀雄 プロフィール

成長政策をとらなければ生活水準が2割低下する

就業者の場合、実質賃金は不変なのだが、税・社会保険料が引上げられ、手取りがいまより約9%ほど減ってしまうのだ。

一方、再分配を受ける側では、年金や医療費がいまより約9%減らされることになる。

つまり、再分配のための財源措置が今より強化されるにもかかわらず、再分配された効果は現在よりも小さくなるのだ。

以上は実質賃金がいまと不変の場合だが、今後減少することも十分ありうる。そうであれば、再分配後の所得がもっと減る。

上に見た毎月勤労統計調査による実質賃金指数の下落傾向が、今後も続くとしよう、つまり、20年間で生産性が0.872倍になるとしよう。

その場合に 2040年を2020年と比べると、就業者人口は0.807倍になり、生産性が0.872倍になるのだから、総生産額は0.704倍になる。他方、総人口は0.885倍になる。だから1人あたりの分配後所得は、0.704÷0.885=0.795になる。つまり、現在より2割ほど低下するのだ。

 

生活水準がいまの8割に低下して、「等しからざるを憂えず」と言っていられるだろうか? 国民の不満は高まるのではないだろうか?

なお、以上では再分配はすべての年齢層に対して行なうものとした。実際の再分配政策は、就業者から退職後の人口に対してなされるものが多い。これに関しては、より少ない就業者でより多い高齢者を賄わなければならなくなるので、結論は上記よりも厳しくなる。

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