by Gettyimages

「分配政策」だけでは、「20年後の生活水準」がいまより2割低下する

日本に必要なのは相当な生産性向上政策

高齢化が進展する中で適切な再分配を行うためには、就業者1人当たりの生産物が増えなければならない。日本では、過去20年間以上にわたって1人当たり実質賃金が増えていないので、これは容易ならざる課題だ。賃金のこれまでの傾向が続けば、再分配後の1人当たり所得は、現状より2割ほど減ってしまう。だから、分配政策とともに、強力な成長戦略がどうしても必要だ。

再分配のためには元手が必要

岸田文雄内閣は、「分配なくして成長なし」としている。

分配問題は確かに重要だ。経済が成長してもその成果にあずかれない人が大勢いる。コロナ禍では、株価が上昇して資産層が裕福になったにもかかわらず、収入の途を絶たれた人がたくさん生じた。分配問題の重要性は、これまでになく重要になった。

しかし、再分配するためには、元手が必要だ。分配をいかに適正化したところで、全体のパイが自動的に増えるわけではない。元手が増えなければ、貧しさを分かち合うことになってしまう。

日本の場合には、人口の高齢化によって働く人の数が減るので、再分配をする元手が減る危険が高い。そうなると、仮にそれらが適正に再分配されたとしても、1人当たりの所得が減少してしまうのだ。

 

以下では、この問題を定量的に検討することにしよう。

ここでの基本的な想定は、就業者が働き、その一部が税や社会保険料の形で徴収され、それが給付金や社会保障給付の形で再分配されるということだ。所得再分配はさまざまな形で行われているが、額的に最も大きいのは、財政制度を通じるこのような再分配だ。

なお、年金は、受給者が過去に積み立てた保険料で支払われているように見えるが、実際には、その年々の生産物が財政制度を通じて再分配されている。

関連記事

おすすめの記事