財務省のぶっちゃけ話が文春に掲載されたら炎上した件について

矢野次官論文を陰謀とか言われてもなあ
山本 一郎 プロフィール

お父ちゃんがお母ちゃんに離婚されないために

少なくとも、矢野さんが問題視するばら撒き批判というのは、いわば父ちゃんである政治家が「俺にカネを渡せば倍にして帰ってくらァ」とタンスのおカネをわしづかみにして競馬場に向かうのを、母ちゃんである矢野康治さんが羽交い絞めにして止めようとしているの図です。

これらの構図は、かつて勤労人口が増え人口ボーナス期にあった日本が、地方経済維持も考えて建設国債による財政拡大を繰り返してきた55年体制の自民党政治の「選挙必勝法」であったばら撒きから脱却できず、人口減少で貴重な税収を最適に使う必要のある現代においては間尺が合わないやり方になってしまっていることに気づくべきです。

また、バブル崩壊以降この数十年にわたって日本の財政拡張が続き、矢野さんの2005年著書にあるような財政危機・財政破綻論とは裏腹に日本の国債に対するリスクプレミアムが縮小した(他の国の国債と比べて日本円や日本国債の信認が高くなり金利が下がったこと)は、結果として戦後日本の経済を支えた先人が諸外国に投資して得ている利益が日本の経済収支を支え、本来ならデフォルトになったりハイパーインフレとなりかねない財政状況をファイナンスしてくれていることをまず理解するべきです。

他方、小泉政権から旧民主党政権を挟んで安倍政権のアベノミクスまでは新自由主義的な金融政策で「デフレ対策」を大義名分として金融緩和と成長戦略、財政出動を旗頭にビシバシ国債を買い上げたことで、これが実質的に財政規律の観点からは大きなマイナスになっていたことを矢野さんの論文では指摘していません。

ばら撒きを批判するならば、アベノミクスで実施したトリクルダウンこそが(結果的に)虚構で、上のワイングラスからたくさんワインを注げば下のワイングラスまでお酒が注がれるはずが、結果的に上のワイングラスがどんどん膨張していってアベノミクスで儲かるやつだけが儲かって、そうでない人は最低賃金で働く経済となって格差がほんのり広がってしまい、財政を痛めてまでやる政策だったのか、という批判をおそらくは矢野さんはしたかったのでしょう。

その結果として、一連の岸田文雄内閣では改めて「新しい資本主義」を標榜して新自由主義的な経済政策との決別を宣言し、成長と分配のどっちが先かという謎の排中律まで岸田総理本人が言うようになってしまいました。本来は「成長なくして分配なし」も「分配なくして成長なし」も謝りで、一体のものなんじゃないのと思うわけですが、なぜか政調会長の高市早苗さんがあまり岸田さんの言うことを理解せずゴリゴリのサナエノミクス的な自民党選挙公約を取りまとめてしまったのでグダグダになっておるなあとマーケットからは思うわけです。

 

もう右肩上がりの経済ではないのだ、という大前提に立って、むしろ永田町と霞が関の関係を再構築しなければならないのではないか、と思うのですが、どうでしょうか。

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