財務省のぶっちゃけ話が文春に掲載されたら炎上した件について

矢野次官論文を陰謀とか言われてもなあ
山本 一郎 プロフィール

矢野さんは16年前から言っていることだから

これらの話は、実は16年も前の2005年に、矢野康治さんが自ら上梓した「決断!待ったなしの日本財政危機―平成の子どもたちの未来のために」という面白本にほとんど要旨が書いてあります。

結果的には、財政が大変だ! 破綻しかねない! と16年間言い続けてきたけど、結局空前の低金利政策を続けて、増えた国債の償還額がどんどん一般会計を押しつぶしても金利が上がらないからどうにかなってしまった、というのが実態ですね。

そして、その16年もの間、何が起きていたかと言えば、低金利で借り手有利の情勢であるにもかかわらず日本経済はまったく成長せず、これだけ財政拡張したのに経済成長に資する政策を打つことができなかったというのがオチであります。

これは、89年のバブル崩壊以降、我が国の政治家が打ってきた経済政策や少子高齢化に伴う社会保障政策が上手くいかなかったという意味で「政治家が悪い」「そういう政治家を選んできた日本人が悪い」という話の裏返しです。

それでも、見かけは「あれだけ国家財政の危機だ、財政破綻するするといって、まったく何も起きなかったじゃないか」と財務省嘘つき論が出てしまうわけですが、実際にはリーマンショックに東日本大震災やコロナが来てしまったうえ、世界中がゼロ金利になって「日本型」財政は世界の最先端になってしまうというオチになりました。

これらの議論の流れで言うならば、財務省のお陰で日本の経済が硬直化しているという謎の「財務省陰謀論」が跋扈するようになります。実際、誰かのせいにしておけば、経済が成長しないのもお前の給料が上がらないのも支出を渋る財務省が悪いのだという話で思考停止できるから楽なのでしょう。

しかしながら、実際には矢野さんの記事のように書いてること自体は別に間違いではなく、特別会計を含めても我が国の公債残高はそれなりに危機的状況です。ここでいう財務省は、いわゆる悪玉とか黒幕というよりは「貧乏家庭の母ちゃんが財布のひもを握っている」ような状態なのであって、言っていることは「価値のあることに予算を出しましょう」と「予算を増やしたいのであれば、財政的な手当てをきちんとしましょう」という話です。

 

国家財政と家計部門とは全く違うメカニズムで動いているものですが、しかし「意味や効果のある予算(富)の使い方をしないと貧しくなってしまう」というのは国家も家計も同じです。また、国民からすれば「こんなに税金や社会保険料を払っているのに」と言いたい面もあるかもしれませんが、実際には我が国の国民負担率(所得における税負担と社会保障負担の割合)は諸外国平均から見ても中程度から低負担のほうに入ります。

財務省HPより

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