2021.10.28

理論はちゃんと存在する!? 物理学者と探るタイムトラベルの可能性と限界

SF映画の世界が実現する可能性
高水 裕一 プロフィール

タイムトラベルを可能にする理論

タイムトラベルといってまず思い出すのはやはり『バック・トゥ・ザ・フューチャー』でしょう。主人公のマーティと博士のドクが未来や過去で引き起こすドタバタ騒ぎは今見ても、全く古臭さを感じさせず、まさにSF映画の金字塔と呼べる作品ではないでしょうか。

2人は「デロリアン」という車に乗ってタイムトラベルを行います。そのシーンを振り返ってみると、どうやらデロリアンでは、「プルトニウムを動力源に時速88マイル(141キロメートル)まで加速すると、次元転移装置に1.21ジゴワットの電流が流れて」タイムワープが可能になるようです。行きたい時刻にセットすれば、正確にワープすることもできます。

タイムトラベルの名作『バック・トゥ・ザ・フューチャー』(https://youtu.be/zzHoWtI30NM)

タイムワープをすることを考えれば、なんとも手軽で夢のある方法ですね。もちろん、この方法で本当にタイムワープできるかを論じること自体は少し狙いから外れるので、ここでは、そもそもタイムワープ、特に過去へと行くことが可能なのか、考えてみましょう。

実は、タイムワープの理論自体は考えられています。時間と空間を一体のもとして扱う「時空」という概念がありますが、この時空上の異なる場所を直接結ぶワームホールを用いることで、原理的には異なる時刻、異なる場所への移動が可能になるのです。

もう少し詳しく説明すると、まずはワームホールの出口を光速近くで移動させるのが、最初のステップです。相対性理論では、光速近くで移動する物体の時間はゆっくりと流れます。そこで、この性質を利用して出口だけを限りなく光速に近い速度で移動させれば、入り口と出口の間に大きな時間差が生じます。仮にその時間差を10年だとしましょう。入り口から出口に向かってワームホールを通過すれば、10年前の過去へと戻ることができるのです。

【図】ワームホールを用いたタイムトラベルワームホールを用いたタイムトラベルのイメージ(『物理学者、SF映画にハマる~「時間」と「宇宙」を巡る考察~ 』光文社新書をもとに作成)

一方で、ワームホールを用いたタイムトラベルでは際限なく過去に戻ることはできません。どんなに頑張っても、この方法で戻れるのはワームホールが完成した時点(出口の亜光速移動が終えた時点)における出口の時刻まで。戦国時代や白亜紀までさかのぼることはできません。それも、出口の時刻は、1度亜光速移動が止めれば、私たちと同じ速度で時間が流れます。

つまり、戻れる時刻は一定ではなく、入り口の時刻が1年経てば、戻れる時刻も最初の1年後となるのです。

タイムワープを実現するためのもう1つの戦略

ここまで、タイムトラベルの方法としてワームホールを用いたタイムワープをご紹介しました。しかし、それだけがタイムトラベルを叶える理論とは限りません。例えば、時間と空間を1つにした4次元の時空多様体の存在を考慮すれば、次元を1つ増やした5次元多様体上を移動することによって、4次元時空上(私たちが存在する時空)ではあたかも過去へと移動したように見せることは可能かもしれません。

込み入った話になりますので、もう少し詳しく説明しましょう。鍵を握るのは高次元の宇宙を説明する理論である、「ブレーン宇宙」という5次元宇宙モデルです。この宇宙モデルでは、私たちが存在する時空(空間3次元+時間1次元)はブレーンという膜の上に張りついています。さらに、ブレーンは4次元目の空間方向にも移動が可能だとされています。

【図】ブレーン宇宙モデルブレーン宇宙モデル(『物理学者、SF映画にハマる~「時間」と「宇宙」を巡る考察~ 』光文社新書より)

時間軸をもう1つ増やす

タイムトラベルを叶える上で重要なのは、このモデルにもう一工夫加えた少し特殊な5次元宇宙モデルです。その宇宙モデルは、先ほどの第5の次元が空間4次元目ではなく、時間2次元目になります。

「線」と「面」で考えてみてください。今までは直線上だけしか移動できなかったものが、次元が増えると、平面内を動けるようになります。つまり、時間軸が1つ増えることで、下の図のようにほぼ正の方向の移動だけで過去へと戻れるかもしれないのです。線上しか動けない場合に比べ、面の上を移動できると単純に移動の自由度が増えます。

たとえば、曲線や円状の移動線を描くこともできます。これはタイムループに関係しており、時間が過去に戻ったり、元の時間に再び戻るといったことが実現しやすくなるのです。

【図】時間軸が二次元になったとしたら(時間軸が二次元になったとしたら

ここからは私の想像になってしまいますが、『ターミネーター』では、この5次元宇宙モデルによるタイムトラベルが行われている気がします。というのも、映画でターミネーターは、過去へと戻ると、空間が切り取られたかのように光の玉が現れ、その中から登場しますよね。その「空間そのものが切り取られた」ような演出が、ワームホールによる移動よりも高次元を移動しているように感じさせるのです。

空間4次元の物体が、空間3次元中に出現するとき、私たちはこの高次元物体の断面しか観測できません。たとえば次元を下げて、次の状況を想像してみてください。円柱が、ある面を斜めに通過する場合です。このとき、面の上に住む人からは、通過する立体の断面として半円や楕円がサイズを変えて現れるようにみえます。つまり「物体の変化」として認識されます。そういった想定で考えると、空間的に、突如現れる立体物は、高次元中を移動している物体であるとも想像できるのです。

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