理論はちゃんと存在する!? 物理学者と探るタイムトラベルの可能性と限界

SF映画の世界が実現する可能性

タイムトラベルや星間飛行など、未来の科学への期待が詰まるSF作品。一度は「現実にならないかな」と想像したことはないでしょうか——。もちろん、すべての作品が実現可能性を吟味されて描かれているわけではなく、時にはただの夢物語に聞こえるかもしれません。

一方で、フィクションだからと侮るのも一考です。『スター・ウォーズ』の惑星タトゥイーンは太陽が2つある世界ですが、連星の太陽を持つ惑星は実際にたくさんあり、決して荒唐無稽ではないように、SF世界は時に現実世界に飛び出してくることもあるのです。

そんなSF映画の可能性について、このたび、「ブルーバックス」でもすっかりおなじみになった、宇宙論を専門とする物理学者、高水裕一さんが、新刊『物理学者、SF映画にハマる』(光文社新書)でまとめられました。本記事ではその中のタイムトラベルの可能性と限界について、そのエッセンスを凝縮して紹介します!

フィクションが未来の科学を導く⁉

SF映画と聞いて皆さんは何を思い浮かべるでしょうか。

公開から35年が経っても色あせない『バック・トゥ・ザ・フューチャー』や今なお新作の公開が発表される『スター・ウォーズ』、他にも『ブレードランナー』などなど。きっと、皆さんの中に思い思いのSF作品があることでしょう。今月に公開されたばかりのSF映画『DUNE/デューン 砂の惑星』も、全宇宙を舞台にした壮大なストーリーが描かれており、SFファン待望の話題作として注目されています。

皆さんも一度はそんなSF世界が現実になることを夢見たことがあるのではないでしょうか。タイムトラベルや宇宙旅行をしたいと思ったことだってあるはずです。私も『テネット』を見て、時間が逆行するための技術を妄想したことがあります。

TENETトレーラー(https://youtu.be/vfd-Vc0fahY)

高水さんのTENET論は、〈難解作?『テネット』を10倍楽しむための「5つの心得」https://gendai.ismedia.jp/articles/-/76432からどうぞ

もちろん、SFは文字通り「フィクション」です。現代の科学をもって、その実現可能性を厳密に考えたら、研究者は9割9分9厘「科学的には不可能です」と答えるでしょう。真面目に論じても意味がない部分が多いですし、そもそも科学的設定がない部分に科学的な説明をしようとしても、それには無理があります。

だからといって、すべてを「フィクションだ」と切り捨ててしまうのも考えものです。SF作品の中には、科学的知識を土台にして作られたシーンだってたくさんあるのですから。

例えば、人類が生存可能な惑星を探す旅に出る『インターステラー』ではガルガンチュアと呼ばれるブラックホールが出てきますが、その姿は相対性理論を元に厳密な計算によって導き出されています。

さらに、『スター・ウォーズ』に登場した太陽を2つ持つ惑星タトゥイーンは、30年の時を経て、現実世界でも同じく太陽を複数持つ惑星が数多く見つかっています。

【写真】科学的知識を土台にして作られたシーンもあるSF映画にだって、科学的知識を土台にして作られたシーンもたくさんある photo by pixabay

SF映画は時に科学を学ぶ格好のきっかけにだってなりえる——。そこで、そんなポジティブな視点でSF映画を解釈して、その作品の科学的な背景や実現可能性を探った本、『物理学者、SF映画にハマる』(光文社新書)を執筆しました。ここでは、その中から抜粋して、物理学者の視点からタイムトラベルの可能性について探ってみたいと思います!

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