2021.10.14
# 認知症

認知症になったら「何もわからなくなる」は間違いです! 当事者の声を聴け

『認知症の私から見える社会』レビュー
田中 香織 プロフィール

タブレットやスマホを使った工夫も

どんな病気であれ、その症状に個人差があることは、冷静になればするりと理解できるはず。だが勝手な理解と先入観が、自分の視野を狭くする。その結果、「よかれ」と思って行った支援や判断が、当事者の行動を縛ってしまい、その生き方すら変えてしまう。サポートする側からすれば思うところもあるだろうが、視点を変えれば、人が人である限り当たり前に抱く感情や心境が語られていることもあり、自然と当事者の心へ気持ちが寄り添っていった。

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全六章からなる本書では、第一章で認知症の当事者たちの言葉を、第二章から第四章では当事者を取り巻く現状と、その気持ちが細やかに紹介されている。正直に言うと、読み始めてしばらくは居心地の悪さを感じていた。それは著者がつづる現状への憤りやもどかしさを、自分が受け止めきれていないと感じていたためだろう。また個人的に耳にしてきたのも、基本的には支援する側の話ばかりだったので、自分がどれだけ一方向からしか見ていなかったかにも気づかされ、赤面した。

第五章では、当事者が日常の中で実際に行っている「工夫」の数々が挙げられている。それらは「忘れることに備える」「日課を続けるため」といった目的別に分類されており、なかにはタブレットやスマートフォンを使用した事例だけでなく、著者が本書を作った時に行った「工夫」についても触れられていた。いずれについても「できないこと」を前提とした上で、「できること」へと繋げていく試みであり、一番のポイントは「当事者が主体的に決めること」だそうだ。

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