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財務事務次官の「まさかの論考」、その主張が目をそらしている「本質的な問題」

根幹には「経済成長」の問題がある

財務省の矢野康治財務事務次官が、日本はバラマキ政策に陥っており、このままでは国家財政が破綻するという記事を寄稿した。現職の財務次官が意見を表明するのは極めて異例である。松野博一官房長官は「私的な意見として述べたものだ」と説明しているが、額面通りに受け取る人はいない。財務省にはどのような狙いがあるのだろうか。また、矢野氏の主張は妥当なのだろうか。

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異例の人事で昇進

矢野氏は2021年10月8日発売の月刊誌に『財務次官、モノ申す「このままでは国家財政は破綻する」』という記事を寄稿した。矢野氏は記事において、近年は「バラマキ合戦のような政策論」ばかりになっており、「国庫には無尽蔵にお金があるかのような話ばかりが聞こえてきます」と述べている。同氏は日本の財政状況について「本当に危険だ」としており、公務員として決定する立場にはないとしながらも、「心あるモノ言う犬」として、言うべきことは言うと主張している。

公務員というのは基本的に主権者である国民から選ばれた政治家の指示で行政を遂行する立場であり、公に自らの主張を述べることはあまりない。特に最大の権力を持つ財務省は政と官の役割について敏感であり、歴代の財務次官はできるだけ目立たないよう黒子に徹してきた。その意味では、財務次官が月刊誌に記事を寄稿するというのは極めて異例のことであり、背景には何か理由があると考えた方がよい。

矢野氏は1985年入省で、官房長、主税局長、主計局長などを経て今年の7月に次官に就任した。財務省は戦時中ですらイレギュラーな異動がほとんどなかったといわれるほど鉄壁な人事で知られており、次官に昇進する可能性が高い人物はかなり前から絞られてくる。矢野氏は主流の法学部ではなく経済学部卒であることや、文書課長など次官の登竜門ポストを経験していないことから、当初は次官になる可能性は低いとされてきた。

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