しかし、たしかに安倍元首相にとっては民主党政権時代は悪夢だったろうが、国民のすべてが悪夢だと思っていたわけではない。
そこで、民主党政権を政策の実現という観点から見直した本が、『民主党政権 未完の日本改革』(ちくま新書)である。
著者は民主党政権三人の首相のなかのひとり、菅直人である。
どうせ自己弁護か自慢だらけの本だろうと思うだろう。たしかに、読む人の立場、読み方によってはそうなる。
だが、「解釈」はさまざまだが、民主党政権3年3ヵ月間で、何をやったという「事実」は事実として記されていると思う。実は私はこの本の編集に関わっているので、第三者ではない。関係者による紹介記事となるが、だからこそ、事実のみを記したいと思う。
マニフェストの意外な達成率
民主党政権といえば、「マニフェスト」を思い出す人も多いだろう。
忘れている人も多いが、子ども手当、高校無償化、高速道路無料化などを約束した。
さらに、マニフェストには記載されていなかったが、鳩山代表が沖縄の米軍普天間基地を「最低でも県外」に移転させると約束した。最も期待はずれに終わったのが、この普天間基地の移設問題だ。
あるいは、マニフェストにはなかったのに、消費税の増税を決めたことも批判された。
民主党のマニフェストは抽象的な選挙公約ではなく、具体的な数値も列記し、達成されたかどうかが検証可能なものとして作られた。
次の総選挙のときには、どれくらい達成されたかを検証し、それでさらに政権を続けさせてほしいと、有権者に問うはずだった。
実際、民主党は2012年の総選挙の直前に、マニフェストを検証し発表しているのだが、それはほとんど話題にならなかった。
私のように民主党を支持していた人間でも、2012年の総選挙のときは、「あのマニフェストは、どれくらい達成されたのだろう」と調べることもしなかった。
なんとなく、マニフェストはほとんど実現できなかったと思ってしまった。
だが、75%は達成されていたのだ。