「投票に行く」という文化資本

文化資本とは、お金以外に取得した素養や習慣などを指す言葉です。話し方や振る舞い、趣味、人間関係など、人は多くのものを、育った環境によって獲得しています。例えば私が大学に進学したのも、「毎日勉強する習慣」「本を読む習慣」「大学進学という発想」「賢さを重視する風土」といった多くの文化資本を親などから与えられたためだと言えます。

読み聞かせで自然に本が好きになったり、言葉に興味を持つことも文化資本 Photo by iStock
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文化資本について考えれば、人々が投票に行くか否かも、「個人の意識」だけでは測れません。周囲に「政治について話をする環境」があるかどうか。「投票所に行くという習慣」があるか。色々なものが個人の投票率に影響を与えることになります。

現代のように、核家族化や単身世帯化が進んだり、組合や職業団体への加入率が下がったりすれば、文化資本の獲得機会も変わってくるでしょう。

ところで現在、投票率は全ての世代で低下傾向にあり、若者だけの特徴ではありません。文化資本という観点からすると、「投票にいくのが当たり前」と思っていた人たちからさえ、その習慣が失われてしまったことになります。となると、それだけ強力な社会的影響があったとみるのがいいでしょう。

現代の若年層が、とりわけ低投票であるのは確かです。つまり、「若者の選挙離れ」そのものは、やはり存在すると言えるでしょう。一方で、それが「若者が無関心になったから」だとまとめるのが妥当かといえば、それは別問題です。そもそも「選挙離れ」が全世代の集団的な現象である以上、まずは「有権者の選挙離れ」を改善するための議論が必要になるためです。

そもそも投票率の低下の大きな要因としては、小選挙区制の導入による死票の増加、政党再編が続く中での無党派層の激増、組織動員の機会減少などなど、投票動機や投票義務感が低下する条件が多く揃っていることが指摘されています。投票率の低さを問題視するのであれば、本来は選挙制度そのものを、改めて大きく見直すことも必要になります。

とはいえ、大きな政治改革を行うのはとても大変で、少なくともここ次の衆院選や参院選には間に合いません。でも、打つ手なしというわけでもありません。投票率に関する研究からは、いくつか具体的な改善のヒントを得られます。