僕が書いた本で深まった兄妹の絆

そして、元々とても仲の良い妹の実那さんと、ある日セクシュアリティについての話題になったとき、お兄さんが「これを読んでごらん」と差し出したのが『ゲイだけど質問ある?』だった。

実那さんは、テレビの番組制作を志して以来、「いつか鈴掛真さんに会って、自分の番組に出てもらうこと」を自身の夢として掲げてくれていたという。
それが『ゲイだけど質問ある?』を教えてくれたお兄さんへの恩返しになる、と。

上杉隆さんの粋な計らいも相まって、実那さんは思いがけずインターンのうちに夢を叶えてしまったわけだけど、「お兄ちゃん! 夢が叶ったよ!」と大はしゃぎで報告する実那さんと、「良かったな! 嬉しいな!」と心から祝福するお兄さん、この二人の笑顔をつくれたのは僕の書いた1冊の本なのだなと、そんな奇跡のような話にやっと実感を持つことができた。

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お兄さんの緊張が少し解けた頃、やっと絞り出した質問が「鈴掛さんの好きな食べ物はなんですか?」だったのが可笑しくて、僕と実那さんは大声を上げて笑った。
ちなみに僕の好きな食べ物は、いぶりがっこである。

目に見えない未曾有のウイルスと人類との闘いは、気づけば2年近くも続いており、それと同じ時間、僕は故郷の家族に会えていない。
けれど、目に見えないところで世界は着実に良い方向へ進んでいるし、今もこの世界のどこかで、僕の言葉が誰かの背中を押す存在になれているかもしれない
そう思えば、リビングのワークスペースから望む窓の向こうが、少し鮮やかに見えるような気がした。

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かつて刊行した自分の本が、誰かの背中を押すきっかけになりうる……言葉は誰かを傷つけることもあるけれど、逆にもなりうることを改めて感じさせられる