障害があり譲渡されないと思い引き取った猫

【さくら】

黒猫のさくらと出会ったのは2012年。場所は、杉本さんが講演のために訪れた愛知県岡崎市の施設だった。

足に障害がある状態で保護されたさくらちゃん。冷静に時間をかけて考え、さくらちゃんの里親になった杉本さん。写真提供/公益財団法人動物環境・福祉協会Eva

「さくらはその時すでに足に障害があり、立って歩くことができませんでした。小脳にも障害があり、ずっと頭が揺れているような感じで……これだけ介護に手がかかる猫の里親になってくれる人を探すのは厳しいだろうと思い、殺処分が迫っていることが容易に想像できました。でもなぜか、私はとても心惹かれてしまったのです。とはいえ、安易に一時的な感情や同情だけで『里親になります』などと言えるものではありません。一旦、東京に戻って冷静に考えることにしました。結果、やはり一緒に暮らしたいと思い、改めて岡崎市に行って譲渡していただきました」

その後、杉本家は京都へ転居。アフターの写真のように、当時、元気だった小梅ちゃんやでんちゃんをはじめ、杉本家のわんこ・にゃんこたちがいつもさくらちゃんの周りを囲むように、自然に集まって過ごしていた。四肢が全く動かないさくらちゃんがずっと寝たきりでいるのはつまらないだろうと、杉本さんはオーダーして車椅子を用意。さくらちゃんはその上でご飯を食べ、昼寝するのが日課になった。

さくらちゃんの車椅子もオーダー。さくらちゃんが少しでも快適になるように工夫していったという。写真提供/公益財団法人動物環境・福祉協会Eva
でんちゃん、小梅ちゃんたちも不思議とさくらちゃんの周りに集まったという。写真提供/公益財団法人動物環境・福祉協会Eva

「動けないのに、食べようという意欲がとてもすごくて、さくらは生命力にあふれていました。頭を揺らしながら一生懸命に、たくさん食べる。その姿を見ていると本当にたくましいなと思うし、自分たちが生きている中で悩んだり、苦しんたり後悔したり、つまらないことで落ち込んだりすることがまるでちっぽけなものに思えて……こうやってたくましく生きていかないといけないな、とすごく考えさせられましたね」

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介護の時間さえも愛おしい。これが動物との暮らし

自分に与えられた現状をしっかり受け入れ、前を見てまっすぐ生きる。そんな生きる姿勢をさくらちゃんから学んだという杉本さん。さくらちゃんは次第に自分で排泄もできなくなり、寝返りも打てなくなるなど、介護で手のかかることもどんどん増えていったけれど、その分、気づかされることもたくさんあった。

「とにかく自分も一生懸命だったので、あまり大変だと感じたことはありませんでした。当然、経験したことがないこともあって、一度、さくらに床ずれができてしまったことがありました。なんとか治さなきゃいけないと思い、本で調べたり獣医さんに相談しながら、食べ物や薬や寝床を変えるなどして、約7か月かけて、壊死していた皮膚を完璧に元の状態に戻し、毛もキレイに生えそろうまでに回復させることができました。

その時の経験から、やっぱり私は健常者で、動けないさくらの状況を、まだまだ十分に想像することができなかったのだということを痛感しました。この子の状況、気持ち、痛みをもっと想像する力が必要だったとすごく反省して……思いやりというのは想像力なのだと感じました」

さくらちゃんの介護から本当に大切なことを教わったと杉本さん。写真提供/公益財団法人動物環境・福祉協会Eva

2014年のある日、いつものように車椅子の上で昼寝をし、そのままさくらちゃんは眠るように亡くなった。

約2年半の介護生活でしたが、その時間は私にとって本当に宝物のような時間でした。さくらはきっと天国で、不自由だった体から解放されて、走り回ったり、高いところに飛び乗っているんだろうなと思いますね」

今回のお話の動画はこちらです。合わせてごらんください。

YouTube(Evaチャンネル)