軍事緊張はエスカレート…習近平がアメリカに「弱腰」になれない深刻事情

米中対立の先行きは依然として不透明だ
歳川 隆雄 プロフィール

名指しの批判は避けた

米中歩み寄りの兆しはあった。そもそもジョー・バイデン大統領は9月21日の国連総会の一般演説で「China」という固有名詞を一度も使わなかった。確かに中国を念頭に「人種的、民族的、宗教的少数者を標的とした弾圧は非難されなければならない」と述べ、中国の新疆ウイグル自治区での弾圧問題に言及した。しかし名指し批判をしなかった。

さらに言えば、ジーナ・レイモンド商務長官は同24日の米紙ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)とのインタビューで「米中関係の改善に着手したい」「ビジネス団(米中ビジネス協議会幹部)を連れて中国に行き、商談をまとめたい」と語っていたのだ。

その背景にはバイデン政権がアフガニスタン駐留米軍の性急な全面撤退で支持率の急降下を招き、さらにバイデン氏主導で進めてきた総額1兆ドル(約110兆円)規模のインフラ投資法案を巡る与党・民主党内左派と穏健派の路線対立がある。

これらバイデン氏が直面する難題はすべて上院(34議席)・下院(全議席)選を含む来年11月の中間選挙に、実は今後の対中通商戦略の構築・運営が多大な影響を与えるのだ。米中西部の農業地域(コーン・ベルト)と製造業地域(ラスト・ベルト)が今や民主党にとっての死活的な票田である。

 

過度な対中強硬規制・罰則によって中国が米農産品購入を制限すれば農業票と商工票を失う。他方、関税緩和など対中宥和姿勢を見せれば米議会からの反発を受ける上に製造業票を失いかねない。

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