Windows 11への移行猶予は約4年
条件が厳しくなればなるほど、Windows 11で動作するPCは少なくなる。
Windows 8から10へと移行する際には、アップグレード価格の無償化を含め、アップグレードのためのハードルがかなり低く設定されていた。それだけ、Windows 7や8の世代から、Windows 10へと、全体基盤の移行を進めたかったのだろう。
一方で、前述のように、Windows 10から11への移行は少々厳しめだ。
実のところ、Windows 10のサポート期間は「2025年10月まで」とされており、今後も約4年間、利用できる。機能追加があるかどうかはともかく、セキュリティ対策向けのアップデートは続いていく。
そう考えると、Windows 11への移行は「とにかくすぐに、いっせいに」というかたちではなく、公開から徐々に進んでいき、2025年にWindows 10のサポートが終わるころに、Windows 10で動いているPCがWindows 11搭載製品へと入れ替わっている……というのが理想的なかたちなのかもしれない。
そうであるならば、2年ほど前までにPCを買った人はスムーズに移行でき、それ以前のモデルを使用している人には移行へのハードルがある、というアップグレード条件もよく理解できる。
マイクロソフトを含め、多くのメーカーが「Windows 11搭載PC」を発売しており、そのなかには、マルチディスプレイやスタイラスペン、5Gなどの比較的新しいハードウエア要件を備えたものもある。いずれどこかのタイミングで新しいPCを購入するなら、Windows 11への本格移行はそのときでいい……という判断もありうるだろう。

目指すは「地球上で最もオープンなプラットフォーム」
Windows 11の登場に合わせて大きく変わるのが、「Microsoft Store」だ。
スマホ用OSには、「App Store」「Google Play」という各OSプラットフォーマーが運営するアプリ・コンテンツストアがある。Microsoft Storeは、そのWindows版だ。
とはいえ、実際に使っている人はきわめて少ないのが現状だ。PCでは自由にアプリが配布できるので、ユーザーにとってアプリストアを使う意味が薄かったからだ。配布できるアプリの形式にも制限があり、アプリメーカーから見ても魅力に欠けていた。
しかし、アプリストアには、決済の面でも、アプリの再インストールの手間を省く意味でも価値がある。マイクロソフトとしては、Microsoft Storeをなんとか立て直したい、という意図があった。
Windows 11に合わせて、Microsoft Storeの価値も大きく変わると見込まれる。

Microsoft Storeの見直しによって、まず配布可能なアプリの種類が増える。言い換えれば、「Windows上で動くものならなんでも配布可能」な状態になる。この利点は明白だ。
続いて、「マイクロソフトの決済」を使わずに、「ストアの配布機能」だけを使うことも可能になる。これには説明が必要だろう。
公式ストアに対し、アプリメーカーは微妙な感情を抱きがちだ。自社アプリの効率的な配布には有用だが、販売時に売上から手数料を取られるからだ。そのぶん収益が下がるわけで、"必要悪"のように感じてしまうところもあるようだ。
だが今回、自社で決済機能をもつ企業に対しては、「決済を自社でおこないつつ、配布だけに使うなら手数料は取らない」というモデルに変更される。
前出のパネイ氏は、「Windowsを地球上で最もオープンなプラットフォームにしたい」と話す。ストアモデルの変更は、まさにそのための大きな一手だ。
ただし、残念なことも1つある。