「次のWindows」の考え方
マイクロソフトのチーフ・プロダクト・オフィサーを務めるパノス・パネイ氏は、Windows 11公開から数時間後に、筆者を含む数名のアジア圏のジャーナリストを囲んでのオンライン・ミーティングで、次のように解説した。

「仕事の仕方や遊び方、コミュニケーションの取り方、学び方や教え方など、私たちの生活は驚くほど変化しました。そのすべてが現実であり、3年前とはまったく異なっています。率直にいって、(オンラインとオフラインが)ハイブリッドな世界は、これからも変わっていくでしょう。
私たちは、PCにとっての新しい時代に生きています。パンデミックを乗り越え、これまでとは違った生活や仕事の仕方を学ぶなかで、私たちは今、PCをさらに進化させようと考えているのです」
コロナウイルスの蔓延というパンデミックのさなかで、我々はより多く、PCを使うようになった。ビデオ会議を中心としたリモートワークは、PCのように柔軟性が高い機器がなければ推進しづらかったことは疑いがない。
マイクロソフト自身も、そうした影響のなかから「次のWindows」を考えるようになった、ということだろう。
無料アップグレードが可能だが…
Windowsが刷新されるたびに、つねに課題になるのが「アップデート」だ。
新しいOSの登場に良い印象をもてない人がいるのは、「アップデートが面倒だから」ということが染みついているからだろう。
Windowsはかつて、バージョンアップされるごとに「アップデート版」を購入するものだった。だが、今はそうではない。
Windows 10以降は、よりシンプルになった。簡単にいえば、「Windowsが動いているPCがあれば、その上では最新のWindowsが利用可能」というモデルになったからだ。したがって、Windows 10が動作しているPCからのWindows 11へのアップグレードには、費用はかからない。
一方で、「どんなPCでもWindows 11にアップグレードできる」わけではない。Windows 10は快適に動作しているのに、Windows 11はインストールできないこともありうるのだ。
しかし、Windows 11がいわゆる「重いOS」であり、機能追加によって遅いCPUでは快適に動かないのか……というと、そうでもなさそうだ。
筆者は、Windows 11の存在が明かされた6月以降、テストマシンで継続的にWindows 11を使いつづけているが、動作は特に遅くはない。性能が低いCPU+4GBのメモリーといった、そもそもWindows 10が快適に動作しているとはいいがたいPCならともかく、一定程度の性能のPCなら、動作速度はそこまで変わらない。
厳しいアップグレード条件
だが、Windows 11の導入に際し、マイクロソフトは動作条件を比較的、厳密に定めている。具体的にいえば、CPUについては「インテル製では2017年後半以降、AMD製では2018年中盤以降に発売された製品」としている。案外、最近のものしかサポートしていないのだな……という印象だ。
同様に重要なのが、「TPM 2.0」という機能が必須である、という点だ。
TPMは「Trusted Platform Module」の略で、システムが使う暗号化機能を指す。ファイルを暗号化して守るだけでなく、OSが起動時に使うソフトウエアに不正なソフト(いわゆるマルウェア)が入り込むのを防ぐ役割も果たしている。
企業向けPCでは以前から使われていたものであり、個人向けであっても搭載されている場合が多い。ただし、自作PCを中心に、「機能として備わっていても、オンになっていない」「使えない状態になっている」ものもある。
今回は特に、この点にハードルがあるようだ。TPM 2.0がありさえすればマルウェアの被害を100%防げるわけではないが、あったほうが安全性が高まるのは間違いない。
現在使用中のPCがWindows 11にアップグレードが可能かどうかは、マイクロソフトが無償公開している「PC正常性チェック」アプリで確認できる。