現在、全国拡大公開中で話題の『由宇子の天秤』(春本雄二郎監督)は、『この世界の片隅に』監督の片渕須直がプロデューサーを務め、ベルリン国際映画祭パノラマ部門に正式出品されると共に、アテネ国際映画祭で最優秀脚本賞を受賞した作品だ。

テレビドキュメンタリーを制作する主人公・由宇子は正義感が強く、常に真実を明らかにすることを信条としていた。ところがある日、学習塾を経営する父のある“過ち”を聞いてしまう。由宇子は真実を明らかにするのか、それとも、父を守るのか――。

主人公・由宇子を演じた瀧内公美さんが本作を受けて考えた、「正しさ」と「真実」の難しさとは。

瀧内公美さん/写真:山本倫子
『由宇子の天秤』
3年前に起きた女子高生いじめ自殺事件を追うテレビのドキュメンタリーのディレクターの由宇子は、関係者に対する取材を通して事件の真相に迫りつつあった。そんなある日、自らも講師として働く学習塾を経営する父の思いもよらない“過ち”を聞かされる。大切なものを守りたいという気持ちと自分の「正義」の間で揺れ動く由宇子。由宇子が選んだ“正しさ”とは――。
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目線が違う人たちにとっての「真実」とは

――昼間はテレビ局のドキュメンタリーを制作するディレクター、夜は家業の塾で生徒を教える塾講師の役でしたが、2つは「伝える」仕事という共通点があるように思いました。

『由宇子の天秤』より

瀧内:そうですね、両方とも情報発信をする仕事であり、なおかつ、間違いを伝えてはならない仕事だと思います。ただ、ジャーナリズムは「国民に真実を伝えなくてはならない」とよく言われますが、ではこれだけ情報が溢れている社会において、「真実」とは、そして「正しさ」とは何だろう? と

ジャーナリズムにおいては、取材対象が見ている真実と取材者から見た真実には差異がありますし、教育の場合においては、生徒からの目線と生徒への目線は当然違います。両方とも情報を伝える仕事ではありますが、情報の発信者と受け手では同じ情報でも捉え方が異なるということが共通しているのではないかと。

また、ジャーナリズムも教育も一歩間違えば、人を間違った方向に導いてしまうという怖さがあります。情報を発信する仕事全般に言えることですが、そういう恐ろしさがあると思いますね。