世界を大きく変えるには、株の売買禁止と、銀行の廃止が重要だ

これで金持ちと労働者の分断は消える
江口 泰子 プロフィール

これではベーシックインカムに反対したくなるのも当然だろう。持てる者に対する憎悪を煽り、労働者と富裕層とのあいだの亀裂を深め、社会の混乱を招いてしまう恐れがある。

お金の移転ではなく社会から受け取る当然のリターン

だが、本書が描く2025年のコーポ・サンディカリズムの世界では、ベーシックインカムの原資は税金ではない。そもそも、バルファキスが描くポスト資本主義の世界には法人税と土地税しかないのだ──所得税はない。もちろん売り上げ税も付加価値税もない。なにを買おうと、誰も国にびた一文払わない。その代わり、国は企業に純収入の5%を法人税として課税し、その法人税をベーシックインカムの原資としている。

また、もう一つの世界では、市民を「集団で生産する資本ストックの共同所有者」と位置づけているため、ベーシックインカムは「市民1人ひとりが受け取る権利のあるリターン」となる。そのため、おカネにならない、それじゃ食べていけないといわれるような研究や社会貢献や芸術活動をしていても、一般に仕事と認められにくいことをしていても、やはり市民全員に、社会の配当であるベーシックインカムを受け取る権利があるのだ。

 

そうと聞けば、誰でもそのようなポスト資本主義の社会に大きな関心が湧くだろう。とはいえ、「そんな世界は、SF小説のなかだから描けるのであって、実際に実現することは不可能に決まっている」と思うのも無理はない。だが、そのようなポスト資本主義の世界を実現するための方法についても、バルファキスは具体的な例やヒントを教えてくれているのだ。

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