世界を大きく変えるには、株の売買禁止と、銀行の廃止が重要だ

これで金持ちと労働者の分断は消える
ギリシャ生まれの型破りな経済学者であり、現職の政治家でもあるヤニス・バルファキス。彼の新作『クソったれ資本主義が倒れたあとの、もう一つの世界』の魅力を解剖する連載第2回。前回ではバルファキスが、「資本主義に代わる別の選択肢」の姿を描くために、SF小説のかたちを選んだ理由や経緯について紹介した。それでは、実際にバルファキスが描いた「2025年の民主化された社会主義の世界」とはどんな姿なのか。そして、そのカギとなるふたつの要素とは?

第1に重要なのは、株の売買の禁止

バルファキスが描いた、2025年のもう一つの世界では「コーポ(企業)・サンディカリズム」が実現している。サンディカリズムは、もともと「組合主義」を意味し、ゼネラルストライキなどの労働者の行動によって資本主義を倒し、集産主義の社会を実現しようという、急進的な社会主義の思想や運動を指す。また集産主義とは、土地や工場、機械などの生産手段の私有を廃して、社会の共同所有にしようという思想である。

バルファキスが描いた2025年の「ポスト資本主義の世界」には、ふたつの重要なカギがある。ひとつは「株の売買の禁止」。考えてみればいい。メディア王のルパート・マードックが財力にモノを言わせてあちこちの新聞社の株を買いまくり、メディアを所有して、自分の意見を世間に撒き散らすツールにする……。どう考えても、馬鹿げていて、危険なことではないか。

バルファキスは、株を投票権だと考える。そしてその投票権は、重要な決定がなされる会議で使われる。今日、重要な決定はゴールドマン・サックスやグーグルの重役会や株主総会で下される。その決定は、私たち市民の生活を左右し、地球上のあらゆる生命の行く末も決めてしまう。そうであるにもかかわらず、その投票権である株を売り買いでき、一部の富裕層だけが買い占めることができるとは、まさしく民主主義の終わりではないか。今日の民主主義はプロパガンダでしかない。一部の寡頭集団が投票権を独占し、投票権を寡頭集団が買い占める。

 

本書のなかで実現している「1人1株1票」の原則は、極めて急進的だが非常にシンプルでもある。しかも、選挙では1人1票の原則が保たれており、その投票権は売買できず、誰かに貸し出すこともできない。ただ、1人ひとりに与えられたその権利を、有権者は行使するだけだ。

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