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「普通」の正社員でも貧困?年収320万のリアルなお財布事情

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「普通」の大学を出て「普通」の仕事に就けば、結婚できて子どもも二人ぐらいは持てる。マイホームも買って、老後もなんとか暮らしていける……かつての日本ではこれが当たり前だった。だが、令和の現在ではどうだろうか。

厚生労働省「国民生活基礎調査」によると、日本の所得の平均値は552万3000円だが、中央値は437万円。しかも、平均所得額以下の世帯が61.1%を占める。年収437万円で、一家4人を養うのはなかなか厳しいものがある。20~30歳代の若者ならば、(よほどの大企業でない限り)月収は額面で24万円(手取りは20万円弱ぐらい)、ボーナスが2ヵ月分ぐらいで、だいたい年収320万円ぐらいというのが多数派だろう。一人暮らしができず、実家暮らしを選択する人も多い金額だ。ランチは基本的にワンコインかお弁当。服はユニクロだが、時にユニクロでさえ高く感じる……という暮らしぶりである。

これまで「貧困」というと、非正規労働者やいわゆるアンダークラスにスポットが当たっていた。だがこの数字からみると、普通の会社に勤める普通の正社員という大多数の人も、かなり苦しいお財布事情だということがわかる。しかも今の40歳以下の若者は、物心ついたときから不景気で、今後給料が増えていくという希望を持つことが難しい

今回は20~30歳代の若者にインタビューをし、生活の実態を聞いてみた。そこからは、正社員で働いているとは思えないほどギリギリの暮らしが浮かび上がってきた。

38歳、手取り19万円…週末にはアルバイト

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都内で団体職員として勤める秀美さん(仮名・38歳。プライバシーに配慮し、一部変更を加えています。以下同)も、将来に不安を抱える一人だ。地方の私立大学を卒業した秀美さんは、小さな広告会社を経て、10年ほど前からある財団法人で事務職として働いている。新型コロナウイルスの影響で、それまで行なっていた海外の事務所と交渉する仕事が減り仕事は暇になってしまったが、身分は安定した正社員。8時30分~16時30分の7時間半労働で、残業は少ない。テレワークも週1回で、労働環境としては恵まれているほうだといえる。だが、月の手取りは19万円弱。この10年間で2回しか昇給がなかったそうだ。ボーナスは夏と冬各1ヵ月分ずつで、年収は額面で310万円ほどになる。家賃4万2000円の木造アパートに住み、ランチはほぼお弁当を手作りしてやりくりを続ける毎日だ。

秀美さんには演劇という趣味があり、休みの日は稽古や舞台の準備などに費やす。ただし同時に交際費を含む出費も少なからずあるため、副業可という環境を生かしてアルバイトをしているという。仕事はカフェの調理補助。日曜と祝日の午前のみ、週4時間ぐらいしかアルバイトをしていないというが、平日をフルタイムで働き、休日も働くとなると、体力的にはかなりハードだ。実際に秀美さんは昨年、体調を崩して入院をしている。「とりあえず貯金はしっかりしたいと思っているんです」という秀美さんは、充実した保険や個人年金、積み立てなどをこつこつとしており、貯金はやっとの思いで450万円を貯めた。とはいえ、今の収入がこれからも続くのは辛いもの。現在は資格試験の勉強をしており、来年以降は転職活動をする予定だと言う。

「結婚すればまた環境も変わるかもしれないけれど、できる気がしない。老後のことは考えないようにしているんです。未来のことを考えてもいいことなくて……。とにかく目の前の生活で精いっぱいです」

 

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