資本主義がない世界では、起業家よりカフェ店員の年収が高くなる?

経済学者バルファキスの思考実験と「仕事の評価」
青木 由美子 プロフィール

カフェの店員のもつ「雰囲気」はゼロ円ではない

もちろん「もう一つの世界」にも単純な賃金労働(DC)はある。たとえば配管の修理工は依頼を受けて水漏れが直ったら終わり。労働への対価のみで、会社に対して1株所有などの権利を要求することはできない。しかしウエイターの仕事はDCとは異なる。

――「その時々で修理を頼まれる配管工と違って、ウエイターはそのカフェの文化の一部であり、その店の産物だから。[中略]ウエイターはただコーヒーを運ぶだけではない。客は店の雰囲気にもおカネを支払うのであって、ウエイターはその店の雰囲気づくりにひと役買っている。オフィスや工場、農場や建築事務所も同じだ。そこでつくり出される最終的な成果物が、その職場の文化や、参加者全員が生み出す相乗効果を反映している場合には、DCの対象から外れる」

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つまりもう一つの世界では、魅力あふれるカフェ店員は創業者と同等の権利をもち、ボーナス次第では創業者を上回る年収となる可能性もある。仕事のアウトプットに、文化や雰囲気は含まれるのか? 私たちの世界ではノーだ。お金や時間、数字で測れないものを評価せずに切り捨てる、これが「クソったれ資本主義」がクソったれである所以なのだから。では「クソったれではない資本主義」は成立するのか? 「新たな共産主義」が登場するのか? そこでの働き方は?

世界的な経済学者であり、ギリシャ金融危機には豪腕を振るった政治家でもあるバルファキスは、S Fの形をとって私たちの働き方をも問う。「数値化されないあなたの価値」が正当に評価される世界について思いを巡らせてみよう。バルファキスの思考実験は続く。

翻訳/江口泰子

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