資本主義がない世界では、起業家よりカフェ店員の年収が高くなる?

経済学者バルファキスの思考実験と「仕事の評価」
青木 由美子 プロフィール

会社のお金のすべては丸見え

人事評価が具体化したものの一つは給与、ボーナスだ。原資は「会社のお金」だが、幹部でない限り全容はわからない。株式会社であれば総収入は明らかだが配分となると話は違う。「幹部がもらいすぎで現場に還元されない」と不平を漏らすのがせいぜいだろう。ところがバルファキスが描く「もう一つの世界」では、会社のお金はすべて丸見えだ。

――企業の収入は5分割される。まず、総収入のちょうど5パーセントを政府に納める。そして、残りの95パーセントを次の4つに分割する。第1が固定費(減価償却費、ライセンス費、水道光熱費、地代家賃や支払利息など)。第2がR&D(研究開発)費。第3が毎月の人件費(基本給)。そして第4がボーナス。

4分割の割合は、1人1票の原則によって総意で決定する。現在の割合を変えたいと望む者は誰でも、新たな割合を提案しなければならない。たとえば基本給の割合の拡大を望む者は、代わりにどの分野を縮小するのかについて、自分の考えをプレゼンテーションする必要がある。

 

バルファキスの世界では、全社員は入社と同時に「1人1票」を得る。まるで社員食堂の利用カードのごとく当たり前に。その投票によって「会社のお金の使い道」は決まる。

――そのようにして、企業が4つの分野に充てる総額が決定し、基本給の総額が決まると、その総額を全メンバーで均等に分配する。つい先日採用されたばかりの新人秘書から、会社のスターデザイナーや人気エンジニアまでが、同じ基本給を受け取るのだ。

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