2021.10.15
# 不動産

積水ハウス「敗軍の将」たちが続々告白…「私たちは、こうして地面師に騙された」

裁判資料から浮かび上がる「真相」
藤岡 雅 プロフィール

「まさか、そんな…」異様すぎる取引の中身

裁判などで明らかになった事件の経過を見ていこう。

積水ハウスの東京マンション事業部の担当次長は、2017年3月、海喜館が売りに出されているとの情報を入手。情報源の人物が用意したペーパーカンパニーを仲介業者に挟み、海喜館の地主から70億円で購入する手はずを整える。

当時、海喜館の土地は業界の垂涎の的だけに、マンション事業本部長だった三谷和司常務執行役員は一気に前のめりとなる。すぐさま社長の阿部氏に報告すると、4月18日、阿部氏は現地を視察した。そのわずか2日後の4月20日には阿部氏は稟議書を承認決裁したのだった

偽の地主らと契約を交わし手付金の14億円を支払ったのは4月24日のこと。阿部氏の現地視察からわずか6日間でのスピード契約で、以後、取引は「社長案件」(積水ハウスの幹部)として、求心力を増した状態で残金56億円を支払う本決済へと突き進んでいった。

調査対策委員会が作成した「調査報告書」。阿部氏に「重い責任がある」と指摘された
 

ところが、契約直後から本物の地主を名乗る人物から再三にわたり「契約したのは私でない」などと、内容証明が送られてきた。また複数の土地ブローカーが「この取引はおかしい」と東京マンション事業部や東京支社を来訪し、同業他社からも「それは詐欺だ」と警告が入る。

各所からあふれ出る警鐘を三谷氏は、取引を邪魔したい人物たちの妨害工作と決めつけ、本決済を約ひと月も前倒しする。三谷氏に決済の前倒しの了解を求められた阿部氏も、あっさりとこれを了解したのだった。

一方で対峙する偽物の地主は、怪しげな行動を繰り返す。海喜館の内覧会に来ずに、さらに司法書士による本人確認の際に自分の干支を間違える。決済日当日には本物の地主の通報で、現場の担当者が警視庁大崎署に任意同行を求められたが、偽地主との決済は強行された。その当日、東京マンション事業部の担当者らが大崎署で本物の地主の親族や弁護士と接触もしたが、すぐには代金回収に動かなかった。こうして積水ハウスは約56億円の被害に遭った。

実に異様な事件だったのだ。

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