今も怯える元夫からのメール

実は、別れたいまでも容子さんは、元夫の言動に怯えている。父子の面会交流で連絡を取り合う必要があるため、わりと頻繁にメールのやりとりがあるのだが、その文面にいちいち傷つく容子さんがいる。
「別居して実家に戻ったばかりのころ、離婚を視野に入れて働き始めたのですが、無理をしたせいかまた体調を崩してしまって、仕事は辞めたんです。なので、いまは無職。それが元夫には苛立つみたい」

元夫からのメールに「いつになったら仕事をするつもりですか」「私(元夫)からお金を巻き上げて生活している」などの文言を見たときは、とてもいやな気持ちになった。
「養育費は子どもの権利だからいただいているけれど、すべて将来の教育費のために貯金していて、私の生活費に当てているわけではありません。親の世話になっていることは心苦しいけれど、元夫に責められる理由なんて何ひとつないんです。でも、元夫に何か言われると、いまだに動悸がしてきます」

Photo by iStock
-AD-

それでも。容子さんはいま、一歩一歩、自立への道を歩んでいる。
「子どもも小学生になったし、私の体調も回復してきたので、そろそろ仕事を見つけようと思っています。親も高齢で私が手助けしなければならない場面も出てきていて、互いのためにこのまま同居は続けるつもりですが、いつまでも親に頼れるわけではありません。今後、シングルマザーとして子どもを育てていくために私も稼がなくては。できるだけ長く働ける職場を探そうと、先日、シングルマザー支援団体が開催する就職相談会に行ってきました」

行動していることで自信がついてきたためか、先日、子どもを交えて元夫と会ったとき、こんなことがあった。

「元夫は子どもにも厳しくて、勉強やスポーツを頑張らせようとするんですね。子どもに習いごとをさせるという話になったとき、小学校生活が始まったばかりだから少し様子が見たいと言う私に『俺は小学1年生で、一人でバスに乗ってスイミングに通ってた、おまえは過保護だ』と。言われっぱなしじゃ悔しいので、『いまは時代が違うし、子どもが小学校生活に慣れるまでは見送ります』。もしかしたら、元夫に何かを言い返したのって、初めてかもしれません」

人は誰にも、その人のペースややり方というものがある。早ければいい、上を目指すのがいい、がむしゃらに頑張ればいい、というわけではない。ゆっくりと進むことで目に留まる風景、競わないことで得られるやさしさがあり、無理ができない人もいる。
容子さんのペースとやり方で、おだやかに人生を切り開いていってほしい。

元夫も、良かれと思ってダメ出しをしていたのかもしれない。しかしフォローのないダメ出しは人の心を弱らせる可能性が高い。容子さんにとって、それは心臓がすくむものだった。人にはそれぞれのペースがある。いま容子さんはようやく怯え続けていた生活から、自分のペースで進んでいいのだと感じることができるようになったのかもしれない Photo by iStock
上條まゆみさん連載「子どものいる離婚」今までの記事はこちら