2021.10.09
# ドラマ

『北の国から』とは一体何だったのか? 放送開始40年、国民的ドラマが問いかけたもの

碓井 広義 プロフィール

時代と並走したドラマ

80年代は、現在へとつながるさまざまな問題が噴出し始めた時代でもあった。世界一の長寿国となったことで到来した「高齢化社会」。地方から人が流出する現象が止まらない「過疎化社会」。何でもカネに換算しようとする「経済優先社会」。ウォークマンの流行に象徴される「個人社会」……。『北の国から』は「その生き方でいいのか」と別の価値観を提示していた。

また、「家族」にも変化が起きていた。「単身赴任」が当たり前になり、父親が「粗大ごみ」などと呼ばれたりもした。また「家庭内離婚」や「家庭内暴力」といった言葉も広く使われるようになる。『北の国から』はこうした時代を背景に、視聴者が無意識の中で感じていた「家族」の危機と再生への願いを、苦みも伴う物語として具現化していたのだ。

81年10月にスタートして、82年3月末に全24話の放送を終えた『北の国から』は、スペシャル形式で2002年まで続いた。そこには20年の時の流れがあり、徐々に年老いていく五郎の姿がある。その一方で、大人になっていく子どもたちの仕事、恋愛、結婚、いや不倫までもが描かれていった。

見る側は、フィクションであるはずの「黒板一家」を親戚か隣人のように感じながら、五郎と一緒に笑い、泣き、悩み、純や螢の成長を見守り続けた。彼らと並走するように同じ時代を生き、年齢を重ねてきた。

思えば、『北の国から2002遺言』のラストで五郎は遺言を書いていたが、亡くなったわけではなかった。あれから20年近くが過ぎた今年、俳優・田中邦衛は88歳で旅立ってしまった。しかし、五郎は今も変わらず、富良野の風景の中を飄々と歩いているような気がするのだ。

 

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