51歳の実の息子が「認知症の疑いがある76歳母親」の「ヘルパー利用」を拒否した“悲しい事情”
超高齢社会を迎え、年々、深刻さを増している介護問題。そのとき避けて通れないのは、お金の話だ。
著書『身近な人の介護で「損したくない!」と思ったら読む本』を出版した、介護のプロである河北美紀さんは、介護の現場でお金がらみの問題をよく見聞きするという。
今回は、経済的不安から母親に必要な介護サービスを利用させなかったため、のちのち大きく後悔することになった男性のケースを紹介する。
母の「もの忘れ」を放置したために……
運送業に勤める会社員の中村さん(51歳男性、仮名=以下同)。パート勤めの妻(49歳)と大学2年生になる息子(19歳)と都内で三人暮らしをしています。中村さんのご両親は、車で約30分ほど離れた場所に住んでいますが、今年で父親が81歳、母親が76歳と高齢。いつまで二人暮らしを続けていけるのか心配していた矢先に、その出来事は起こりました。
中村さんの母親・純子さんは、昨年から要介護1の介護認定を受け、現在デイサービスに通っていました。
彼女はかんたんな調理や洗濯などの日常生活はなんとかできているものの、足腰の筋力が落ちたうえに、最近特にもの忘れがひどくなってきたことからデイサービスの通いを決めました。

ほとんどお休みすることなく、元気にデイサービスに通っていた純子さん。誰にでも愛想が良く、いつも笑顔でスタッフのジョークにも大げさに笑い盛り上げてくれる、ムードメーカーのような存在です。
ある日、いつものように送迎車に乗ってデイサービスに到着した純子さんでしたが、玄関でお出迎えした女性介護職員は、すぐに彼女の持っているカバンがいつもと違うことに気づきました。
「あれ? 純子さん、デイサービス用のカバン変えたんですか? 可愛いですねえ」
と話しかけました。すると、
「違うのよ、カバンが見つからないの……」
と純子さんは元気のない様子で答えました。
「それは大変ですね。もしかして、外でなくしてしまったんですか?」
と女性介護職員が尋ねると、
「たぶん家にあると思うけど……。探しても出てこないの。カバンにお財布も鍵も入っているから、主人がいないと家を出れなくて……」
という返事がかえってきたのです。