時代によって価値観が変化し、
求められるものが変わった。

――マンガを描き続けているなかで、時代の変化を感じることはありますか?

ずっとモトカレ・マコチを追ってきたユリカだが、社会的にも精神的にも自立し、自分の力で幸せになれたと伝えるシーン。6巻より。

瀧波 『モトカレマニア』は4年くらい連載したんですけど、その間に時代がバンバン変わって、今まで描けなかったことが描けるようになりました。恋愛モノとしてスタートしたけれど、途中で「恋人だった人に執着して、幸せになることについての解像度が低く、言葉にしていない人の話では?」と思ったんです。「あの人がいなくても大丈夫じゃん」ってならないと、今の価値観ではハッピーエンドじゃない。社会的にも精神的にも成長するラストに「現実離れしている」とか「想像と違った」と拒否反応を示す方もいました。

同僚になったマコチが、休みの日にアポなしで会社へやってきてユリカに謝る。2巻より。
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――恋愛マンガからの方向転換がありましたね。

瀧波 2巻で、マコチが休みの日に突然オフィスに来てユリカに謝るシーンがあったんです。毎月ハガキをくれる読者さんがいるのですが、その号のときは「いきなり来て謝るやつ迷惑」みたいなことが書いてあって(笑)。「たしかにマコチって相手のこと考えてないよな」と、キャラがつかめたんです。自分のタイミングでなにもかも進めてしまうのは迷惑っていう感覚、わからない人もまだ多いとは思うんですけど。“壁ドン”がもてはやされたのもほんの数年前だけど、「実は迷惑じゃない?」というほうに世の中が傾きつつあるから、今回のような最終回につながれたかな。

田房 私は『男社会がしんどい』で痴漢被害の話を描いたのですが、本当は2013年頃に出したかったんです。痴漢被害に遭ったときどうすればいいのかが書かれた本が一切ないし、ニュースにもならないし、考察されてもいない。ネットでそのことを書くと、“冤罪のほうが大変だ!”おじさんが出てきて。でも、その後どんどん声をあげる人が増えて、認知されだした。『男社会がしんどい』を描き始めたのは2018年くらいでしたが、気がついたら、そういうのが求められる時代になっていた。社会の認識の変化がすごい。

――今後、描きたいテーマはありますか?

瀧波 どんどん時代が変わっていくから、ちょっと先を見たほうがいいのかなと思うようになりました。時代が変わったところからのスタートで。みんなが問題として認識しているけれど、まだマンガになっていないようなことを拾っていきたい。

田房 私が『大黒柱妻~』でモデルケースとして取材した3人は、バリバリ仕事したい人たちだったんです。でも本当は、「働きたくないけど仕方なく」大黒柱妻になっている人もいる。夫が病気になったとか、働かないとか、シングルの人ももちろん。続編では、そういう人たちも描いていきたい。あとは、「ダメな自分のまま社会人になっていい」ってテーマのマンガも描きたいです。「24時間働こう」って時代じゃないのに、男性社会ではそういう価値観が根強いから、男の人への訴えかけもしたいですね。いい加減、素直になれと。

PROFILE

田房永子 たぶさ・えいこ
2000年マンガ家デビュー。母との確執や葛藤を描いたコミックエッセイ『母がしんどい』(KADOKAWA中経)がベストセラーに。『男社会がしんどい~痴漢だとか子育てだとか炎上だとか~』(竹書房)など著書多数。

瀧波ユカリ たきなみ・ゆかり
マンガ家。日本大学藝術学部写真学科卒業。著書にマンガ『臨死!! 江古田ちゃん』『あさはかな夢みし』(いずれも講談社)、エッセイ『はるまき日記』(文春文庫)、『女もたけなわ』(幻冬舎文庫)などがある。


●情報は、FRaU2021年8月号発売時点のものです。
Text:Chihiro Kurimoto Edit:Saki Miyahara

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