2021.10.08
# 気象 # 環境

ノーベル賞・真鍋さんの警告から半世紀! 数値化された温暖化の脅威

「50年に一度」の災害発生率が3倍に

祝! ノーベル賞

今年のノーベル物理学賞が、アメリカ・プリンストン大学上級研究員の真鍋淑郎さん(90歳)ら3人に贈られることが決まった。地球温暖化の予測研究をめぐる先駆的な業績が、高く評価されてのものだ。

真鍋さんが、コンピュータを使って地球の気候を再現する方法を開発したのは、1960年代のことだった。それから半世紀を経た現在、私たちは毎年のように繰り返される猛暑や豪雨被害に直面し、温暖化の影響を肌で感じるようになっている。

「これって、やっぱり地球温暖化のせい──?」

そんな疑問の声がよく聞かれるようになったが、つい最近までは、「個々の異常気象と温暖化との関係を示すのは難しい」というのが“科学の常識”だった。ところが近年、真鍋さんの後に続く研究者たちが、そんなモヤモヤとした状況を打ち破る新たな研究手法を駆使し、成果を挙げている。

ある異常気象が発生したとき、温暖化がどのくらい影響しているかを見積もる「イベント・アトリビューション」という手法だ。最新の研究手法を通して見えてきた「地球温暖化の恐ろしさ」とは、いったいどのようなものなのか?

「大気・海洋結合モデル」を開発

まずは、真鍋さんの来歴を確認しておこう。

1931年に愛媛県で生まれた真鍋さんは、1958年に東京大学大学院の博士課程を修了したのちに渡米し、当時の米国気象局の研究員になった。専門は「気候物理学」で、1997年から2001年にかけて海洋科学技術センター(現・海洋研究開発機構)で地球温暖化予測研究領域の領域長を務めるなど、米国と日本で研究を続けてきた。現在は米国在住だが、海洋研究開発機構のフェローでもある。

温暖化の予測研究を切り拓いた功績でノーベル物理学賞の受賞が決まった真鍋淑郎さん(笹川平和財団提供)

ノーベル物理学賞の受賞理由は、「信頼性の高い地球温暖化予測を実現する地球気候の物理モデルについての研究」などで、ドイツ・マックスプランク気象学研究所のクラウス・ハッセルマン教授、イタリア・サピエンツァ大学のジョルジョ・パリーシ教授との共同受賞が決まった。

真鍋さんは以前から、世界の気候モデル開発に先鞭をつけたことで広くその名を知られていた。1960年代から、地球の気候の物理モデルの開発を先導し、「大気中の二酸化炭素濃度が上昇すると気温が上がる」ことを数値で示した。大気や海洋の流れを考慮して開発を進めた「大気・海洋結合モデル」は、その後のさまざまな気候モデルの原型となっている。

真鍋さんをはじめとする研究者たちの努力によって、温暖化をめぐる「気候モデル」の研究は目覚しい進展をみせた。その結果、現在は、豪雨による大規模な洪水などの異常気象が発生すると、そのできごとに温暖化がどのように影響しているのかを比較的、短期間に分析するといったこともできるようになってきている。

その新たな研究手法「イベント・アトリビューション」の成果を、近年の大規模自然災害について具体的に見ていこう。

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