韓国が日本を抜いていく――これがアベノミクス時代、最大の「事件」だ

円安に安住して技術革新を怠る
野口 悠紀雄 プロフィール

日本より豊かになる韓国

日本と韓国の年間平均賃金の推移を、下図に示す。

■日本と韓国の年間平均賃金の推移(単位:ドル)

OECDの資料より筆者作成


これは、国内物価変動の影響を取り除いた実質値を、2020年基準購買力平価によってドルに換算した値である(ドル表示)。したがって、為替レートの変動も取り除かれている。

日本の値が2000年の3.8万ドルから2020年の3.9万ドルまでほとんど横ばいだったのに対して、韓国の値は、2000年の2.9万ドルから2020年の4.2万ドルまで、1.4倍になった。このため、2000年には日本の76.2%でしかなかった韓国の実質賃金が、2020年には日本より9%ほど高い水準になった。

逆転は、2015年に起きている。これは、アベノミクスの最中のことだ。韓国の最低賃金が日本より高くなったことが、暫く前に話題になった。最低賃金は政策で決められるものなので、「韓国では高すぎる値に設定されているのが問題だ」との意見もあった。

しかし、最近では平均賃金が日本より高くなっている。これは、経済の実力を表すものだ。日本の実質賃金が停滞しているのに対して、韓国の実質賃金の成長率は高いので、時間が経つほど、日本と韓国の乖離は拡大するだろう。

なぜ韓国が日本より豊かになるのか? その理由は明らかだ。韓国は技術開発を行い、生産性を上げているからだ。それに対して日本は、技術が停滞している。

 

これはとくに先端的な情報関連で明らかだ。日本には、スマートフォンを生産できるメーカーは存在しない。しかし、韓国には、サムスンとLG電子という2大メーカーがある。サムスンは、世界最大のスマートフォンメーカーだ。

また、韓国は、高速通信規格「5G」を世界に先駆けて商用化した。先端半導体を製造できるのは、世界でTSMC(台湾積体電路製造)とサムスン電子しかない。

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