手は大丈夫と勝手に思っていましたが

足は違和感を感じて1年くらいで動かなくなりました。しかしながらALSと言う難病を調べると「発症した個所の進行が早い場合が多いが、他の部分はそこまで早くない」という事例が結構多く出ていたのです。ですから私も「足は1年足らずで動かなくなったけど、手は2~3年もってくれるんじゃないかな」なぁんて根拠もないのに信じていたのでした。

ところが、手の動かなくなる進行も自分が思ったものよりもはるかに早い感じでした。同時進行で起こっていた足の進行に隠されていましたが、ドンドンと腕が上がらなくなり、物が持てなくなっていくのでした。それも徐々に徐々に衰えていくのです。ハッキリと筋肉が無くなっていくのを体感する感じで凹みました。

1週間ごとに腕の上がり方をメモしていましたが、2センチずつ上がらなくなる感じです。腕を上げる筋肉と同時にキープする筋肉も減っていくので、告知から6ヵ月くらいで万歳が出来なくなり、頭に手を持っていくのがやっとになりました。そのスピードですぐに顔に手を伸ばすことが出来なくなったのです。2020年5月にはお風呂で頭と顔が洗えなくなりました。肩より下に関してはそれとなく動いていましたが、維持が出来にくくなるのです。パソコンのキーボードも打てるのですが、すぐに疲れてしまって休み休みになっていってしまいました。

津久井さんの現在の手。右は現在のマウスの持ち方、左は親指と人差し指の間の筋肉が落ちてしまった左手 写真提供/津久井教生
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一番困ったのが食事です。介護用のお箸を試してみましたが、2ヵ月もしないうちに使えなくなりました。親指と人差し指・中指を開いたり閉じたりする筋肉がぺったんこになってしまって動かせなくなってしまったのです。スプーンやフォークを使って食べていたのですが、それを覆すことが起こりました。スプーンやフォークで食事はすくえるのですが「口まで持ち上げて持ってこられない」のです。肩から下の動作はどうにかなるのですが、持ち上げる筋肉・持ち上げる動作が駄目になってしまったのでした。

「ご飯が食べられない」……焦りました。それでもスプーンやフォークに口を近づけて、いわゆる犬食いと言われる方法で食べていました。なんとしてでも「自分の力で食べる」と少し意地になっていたところもありました。やがて、手前に食べ物を持ってくることが出来なくなって、妻に食べさせてもらうようになったのです。

妻に食べさせてもらったご飯はものすごく優しい味で美味しかったです。

収録でNHKに来た時の食堂で、妻の雅子さんと津久井さん 写真提供/津久井教生