ビッグデータ駆使のコンピュータ天気予報 その黎明からの歩みと、目指すところとは?

温暖化で増えてると噂の"アレ"を制御
古川 武彦、大木 勇人

台風を制御できるか? 挑戦的な研究が進む

さらに、本稿を執筆している2021年9月、人為的な「台風制御」を行う研究を国が支援するというニュースが聞こえてきました。

大気現象には「カオス」とか「初期値敏感性」と呼ばれる性質、つまりわずかな初期値の違いで結果が大きく変わってしまうという性質があります。これは数値予報にとってやっかいな性質であり、それを克服する工夫が培われてきました。

【図】初期値敏感性初期値敏感性(『図解・天気予報入門』より)

「台風制御」は、初期値のわずかな違いが結果の大きな違いを生み出す大気の性質を逆手にとって利用しようとするものであり、例えば大量の氷をまいて台風の温度をわずかに下げたり、海面に膜をつくって台風の燃料ともいえる海面からの水蒸気の供給を減らしたり、などのアイデアがあるそうです。

台風は膨大なエネルギーを持っており、人が手を加えてもわずかな初期値の変化ですが、初期値敏感性により結果の違いを大きくできれば効果的です。「カオス」や「初期値敏感性」と向き合ってきた数値予報で培ってきた技術が活用される可能性も高いのではないでしょうか。今後の研究の成り行きが楽しみです。

図解・天気予報入門
ゲリラ豪雨や巨大台風をどう予測するのか

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