2021.10.02
# 本

「韓国エッセイ」の併買本から見える10代女子の“意外なニーズ”

「韓国」くくりでは捉え損なう特有の「傾向」
飯田 一史 プロフィール

この現象を捉えるために必要なこと

ハ・テワン本の併買本を見ていくと、ほかにも興味深いことがある。

汐見夏衛『あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。』(スターツ出版文庫)や宇山佳佑『桜のような僕の恋人』(集英社文庫)など、短尺の動画共有サービスTikTok上で「けんご 小説紹介」(@kengo_book)らが紹介したことをきっかけに2020年にヒットしたと報じられているライト文芸作品も入っていることだ。

もっとも、汐見や宇山の作品は、2018~2019年の学校読書調査において中高生女子の読んだ本ランキングに入っている(汐見は当該作品とは別の『夜が明けたら、いちばんに君に会いにいく』だが、いずれもケータイ小説系のライト文芸の恋愛ものである)。つまり両者はTikTokで話題になる以前より10代から支持を得ていた書き手であり、「TikTok発で初めて売れた」わけでは決してない。

 

ともあれ、汐見・宇山のどちらの作品も、愛した相手が死ぬ、物語開始当初から別れを予感させる設定で始まる悲恋を描いた切ない(エモい)小説であり、なるほどハ・テワンのエッセイの感傷性に通じるものがある。

韓国エッセイ―Twitterポエム―ライト文芸(ケータイ小説)をつないでいった時に見えてくる星座があるのだ。

全部、ぼくのせいだ。

あの意味のない愛に
漠然とした期待をしていた

ぼくのせいだ。(「ぼく1人が愛していたんだった」、ハ・テワン『すべての瞬間が君だった』(マガジンハウス、2020年、258p)
理由のない「好き」に理由を探してもおそらく何もない。
そこにあるのは、
ぼんやりとした「ただ好き」という
柔らかい灯りのようなもの。(カフカ『だから、そばにいて』ワニブックス、2015年、34p)
桜を見ると思い出す。
どれだけ時間が流れても、やっぱりどうしようもなく君を想ってしまうんだ。
美咲、僕はなにもしてあげられなかったね。
その苦しみに気付くことも、悲しみから救うことも、なにもできなかったんだ。(宇山圭佑『桜のような僕の恋人』集英社文庫、2017年、Kindle版より引用)

明らかにここには共通するトーンがあり、それらが読者に響くものになっていると思われる。

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