Twitter/インスタポエムと重なる特徴
しかし、なぜ韓国エッセイとTwitter/インスタポエムの読者層が重なるのか?
こうしたTwitter/インスタポエム本も以下が特徴なのだ。
・ほぼ毎ページ写真やイラスト+少ない文字数でビジュアル重視の版面(本の雑貨的価値を高める施策)
・エモいポエム
・自己肯定、女性慰撫(多少の自虐や感傷)
・エモいポエム
・自己肯定、女性慰撫(多少の自虐や感傷)
韓国エッセイと内容的にも類似しているのである。
版面を並べてみても、


雰囲気が似ている。
もっとも、韓国エッセイにはハ・テワン型の感傷×恋愛もの以外にも、ハ・ワン『あやうく一生懸命生きるところだった』(ダイヤモンド社)をはじめ、中国の「寝そべり族」とも価値観を同じくする「人生降りる」「競争から降りる」ことを謳うタイプの本も目立つが、こちらはTwitter/インスタポエム界隈にそのままの対応物はない、といった違いはある。
「読者を慰撫・肯定する」という意味では蒼井ブルーや0号室が該当するが、彼らは褒めたり応援したりはするものの「社会の支配的な価値観から降りて脱力しよう」という態度は見られない。
現行の社会通念をナナメに見る/切るという意味では、Fは、紡木たく作品や久保帯人『BLEACH』などに連なる叙情的な感性(尾崎豊からニルヴァーナまでの思春期直撃ロックのまんが・アニメ的リアリズムによる変奏、ヤンキー的反抗の美学と文化系による学校的「清く正しい」価値観への反逆の結節点的表現)の継承者だが、こちらはこちらで「降りる」のとは違う。
ただ大きく見れば、日本では2019年頃から韓国エッセイが台頭してくるより少し前の2015年頃から先行してSNS発のビジュアル重視のエモいポエム/エッセイ本が若い女性に支持されていた。韓国エッセイはその既に存在していたマーケットに乗ってきた(のとプラスして、K-POPアイドルや韓ドラ経由での新規読者を獲得した)ものだと言える。