2021.10.02
# 本

「韓国エッセイ」の併買本から見える10代女子の“意外なニーズ”

「韓国」くくりでは捉え損なう特有の「傾向」
飯田 一史 プロフィール

Twitter/インスタポエムと重なる特徴

しかし、なぜ韓国エッセイとTwitter/インスタポエムの読者層が重なるのか?

こうしたTwitter/インスタポエム本も以下が特徴なのだ。

・ほぼ毎ページ写真やイラスト+少ない文字数でビジュアル重視の版面(本の雑貨的価値を高める施策)
・エモいポエム
・自己肯定、女性慰撫(多少の自虐や感傷)

韓国エッセイと内容的にも類似しているのである。

版面を並べてみても、

ハ・テワン『すべての瞬間が君だった』(マガジンハウス、2020年)76-77pより
カフカ『ただそれだけで、恋しくて。』(ワニブックス、2017年)180-181pより

雰囲気が似ている。

もっとも、韓国エッセイにはハ・テワン型の感傷×恋愛もの以外にも、ハ・ワン『あやうく一生懸命生きるところだった』(ダイヤモンド社)をはじめ、中国の「寝そべり族」とも価値観を同じくする「人生降りる」「競争から降りる」ことを謳うタイプの本も目立つが、こちらはTwitter/インスタポエム界隈にそのままの対応物はない、といった違いはある。

「読者を慰撫・肯定する」という意味では蒼井ブルーや0号室が該当するが、彼らは褒めたり応援したりはするものの「社会の支配的な価値観から降りて脱力しよう」という態度は見られない。

 

現行の社会通念をナナメに見る/切るという意味では、Fは、紡木たく作品や久保帯人『BLEACH』などに連なる叙情的な感性(尾崎豊からニルヴァーナまでの思春期直撃ロックのまんが・アニメ的リアリズムによる変奏、ヤンキー的反抗の美学と文化系による学校的「清く正しい」価値観への反逆の結節点的表現)の継承者だが、こちらはこちらで「降りる」のとは違う。

ただ大きく見れば、日本では2019年頃から韓国エッセイが台頭してくるより少し前の2015年頃から先行してSNS発のビジュアル重視のエモいポエム/エッセイ本が若い女性に支持されていた。韓国エッセイはその既に存在していたマーケットに乗ってきた(のとプラスして、K-POPアイドルや韓ドラ経由での新規読者を獲得した)ものだと言える。

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