潜水艦契約破棄で仏が米英豪に大激怒…!EUの「米中両天秤」が破綻したワケ

日本はいざという時のための選択肢を

米国と中国、どちらを取るか

米国・英国・オーストラリアが結んだ安全保障の協定「オーカス(AUKUS)」をめぐって、フランスが大騒ぎをしている。

オーストラリア政府が、フランス製ディーゼル潜水艦の購入契約を破棄し、米国の原子力潜水艦に乗り換えたためだが、交渉は米英豪で秘密裏に進められ、フランスは全く気づかなかったという。そのため、フランスの外相は罵倒とも言える勢いでオーストラリア、米国を非難し、両国の大使を召喚した。

まるで国交断絶のような勢いだったが、どうもフランスお得意の「パフォーマンス」に見えて仕方がない。だいたい、彼らはなぜ英国には怒らないのか? それどころか、米国とオーストラリアの仲を取り持ったはずのジョンソン英首相は、フランスに向かって「冷静になれ」と助言までしている。

Gettyimages

オーストラリアとフランスがディーゼル潜水艦12隻の開発契約を結んだのは2016年。契約時500億豪ドルだった価格が今では2倍近くに引き上げられ、しかし、まだ建造は始まっていないという。これが本当ならキャンセルもありだろう。

この件について評論家の宮崎正弘氏は、「(フランスは)自分の胸に手を当ててごらん、と言いたい人が多いのでは。西側同盟の団結? ずっとこんなものですよ」と軽くいなした。おそらく確信を突いている。

ドイツはというと、もちろんフランス側について米国を非難しているし、欧州委員会のフォン・デア・ライエン委員長も、「EUの一員が容認できない扱いを受けた。(略)なぜそうなったのかを知りたい」と強く反発。しかし、どの言葉の裏側にも、それぞれの思惑があるはずだ。

 

ちなみにドイツ人、フォン・デア・ライエン氏は、メルケル首相の息のかかった政治家で、メルケル氏の意思は、遠隔操作の如く彼女を通して欧州委員会に反映されている。

オーカス結成の背景にあるのは、もちろん中国の台頭に対する危機感だ。中国贔屓のメディアが多いドイツでさえ、中国の横暴がようやく昨年あたりから広く報道され始め、EUは中国の専制主義を看過するのか、それとも米国との同盟を強めるのか、という議論が出てきた。

単純に考えれば、米国の民主主義と組むのが当然に思えるが、しかし、事はそう単純ではない。実はEUを牽引しているドイツ人、フランス人の米国に対する反感は思いの外、強い。だから、マクロン大統領の答えはかねてより、「我々ヨーロッパは、どちらにつくこともしない」というもの。

言い換えれば、「NATOの一員である我々は、米国の資金力と防衛力の下で安全保障を享受しつつ、商売は米国の敵性国家である中国(およびロシア)と順調に続けます」ということだ。

一方、メルケル首相はマクロン大統領よりもさらに中国寄りなので、トランプ前大統領とは犬猿の仲となり、それがEUと米国の深刻な関係悪化にまでつながった。

反米傾向は主要メディアにも見られ、今回のオーカス事件は、米国が相も変わらず冷徹に帝国主義を推し進めようとしている証拠であるかのような報道もある。つまり、EUは米中の覇権争いに巻き込まれた犠牲者であり、アメリカの横暴を逃れるため、ヨーロッパは中国、ロシアに近寄らざるを得ない……といったところだ。

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