2021.10.06
# ウイルス

ブレイクスルー感染、日本はイスラエルの二の舞になるのか?

データからわかった意外な「真実」
宮坂 昌之 プロフィール

ワクチン接種は厚手の「トレンチコート」

このようなことから、私は次のようなたとえを使って新型コロナウイルスとワクチン効果の関係について説明しています。

すなわち、新型コロナウイルスは、決して鉄砲の玉や弓矢や槍のような強い殺傷効果をもつものではありません。むしろ、雨滴みたいなものです。少々なら浴びても大丈夫です(=感染はしません)。

しかし、たくさん浴びると、からだが濡れる(=感染する)、あるいは、悪くするとずぶ濡れになる(=重症化する)ことになります。この場合、雨滴がどこから来るかというと、既に感染している人の口から飛び出してくるのです。

ということは、集団の中で感染者の数が多ければ多いほど、その集団に降る雨の量が多くなり、ワクチン接種者であってもブレイクスルー感染の頻度も増えるようになります。逆に、感染者が少なければ、降雨量は少なくなり、それに応じてブレイクスルー感染の頻度も低くなります。

このように考えると、ワクチン接種を2回受けるというのは、いわば防水加工したトレンチコートや少し厚めのレインコートを着るようなものです。少々の雨なら十分に防げるのです(=感染は防げるということです)。ところが、大雨になると、からだが濡れてしまいます(=感染してしまいます)。だから感染者が多い地域や場所ではブレイクスルー感染が起こりやすくなるのです。

一方、ワクチン接種を受けていない人たちの場合はいわば丸裸の状態ですから、少しの雨でも濡れてしまい(=感染してしまい)、雨が多くなると、当然ずぶ濡れとなり、重症化することとなります。

この話をすると、「なるほど、わかりやすい」と言う方が多いのですが、一方で「ワクチン接種が薄っぺらなレインコートぐらいの役目しかないのなら、着ないほうがましだ。むしろ感染して免疫を得たほうがよい」などと言う人もいます。しかし、それは私が言うレインコート、トレンチコートの意味をまったく取り違えています。

私は、ワクチン効果がコンビニで売っているビニールの薄っぺらな雨合羽みたいなものだなどとは言っていません。もっとずっとしっかりした防水加工済みのトレンチコートあるいはレインコートみたいなものだと言っているのです。

ちなみに、トレンチコートのトレンチとは英語で塹壕(ざんごう)のことです。トレンチコートとは塹壕戦が多かった第一次大戦の時にイギリス軍が用いた悪天候用の防水型軍用コートのことです。

おしゃれ好きな方はバーバリーとかアクアスキュータムというブランドネームをお聞きになったことがあるかもしれません。いずれもトレンチコートを作って有名になった紳士服メーカーです。非常にしっかりした厚手のコートを作っています。これを着て、さらに上襟を立てると、少々の雨でも濡れません(古い方は、名画『カサブランカ』の主演男優として有名なハンフリー・ボガートがしばしば映画の中でトレンチコートを着ていたことを覚えておられるかもしれません)。

いずれにせよ、私が言うトレンチコート、レインコートは厚手の撥水性、防水性のもので、少々の雨は受け付けないものです。コンビニで売っている安手の雨合羽のことではありません。

ワクチンの重症化予防について、アメリカ·ペンシルバニア大学医学部のジェフリー・モリス教授が興味深い分析をしています(https://www.covid-datascience.com/post/what-do-new-israeli-data-say-about-effect-of-vaccines-boosters-vs-death-critical-severe-disease)。

モリス教授は、イスラエル保健省のデータを統計学的に仔細に検討した結果、ワクチンは間違いなく重症化抑制にも死者数抑制にも貢献していると結論づけています。

【表】イスラエルのCOVID-19の死亡者数イスラエルのCOVID-19の死亡者数(8月10日〜9月8日、ただし12歳以下は除外)

モリス教授の解析結果を見ると重症化予防率は、12歳以上で77.2%、12~60歳で89.3%、60歳以上で69.4%という数字が出ています。つまり、60歳以上の高齢者では重症化予防効果が下がっていますが、12~60歳では相変わらず高い重症化予防率を維持しています。

まとめると、新型コロナワクチンを2回接種したからといって完全に感染や発症を免れるわけではありませんが、国が行動制限を全面的に解除せず、徐々に緩和していくようにすれば、ブレイクスルー感染の発生はある程度抑えることができるはずです。

また、発症や感染予防効果は低下しているものの、依然として重症化予防については高い有効率を維持しています。ブレイクスルー感染の恐怖やリスクをあおり立てる報道が目につきますが、決して悲観的に考えるような状況にはないので、油断することなく、これまで同様の生活をおくっていただきたいと思います。

後編『「ワクチン接種すると感染者が増える」はフェイク』(10月13日公開予定)に続く

新型コロナワクチン 本当の「真実」
現代新書

著・宮坂 昌之

免疫学の第一人者として絶大な信頼を得ている著者が、最新の科学的エビデンスをもとに新型コロナワクチンの有効性と安全性を徹底分析。ワクチンに対する疑問と不安がすべて解消する新型コロナワクチン本の決定版!

  amazonはこちら 

関連記事