2021.10.06
# ウイルス

ブレイクスルー感染、日本はイスラエルの二の舞になるのか?

データからわかった意外な「真実」
宮坂 昌之 プロフィール

ブレイクスルー感染の実態は?

このことを知るためには、8月11日に発表されたイスラエル保健省のデータが役に立ちます。それを見ると、規制解除をする6月1日まではブレイクスルー感染はきわめて稀だったのですが、6月後半からその回数が増え始め、8月初旬になると急激に大きく増えています。

前述のごとく、別の報道では、集団内で多数の人が感染するいわゆるクラスター感染が起きると、感染者の半分以上がクラスター感染であるというケースもありました。

【グラフ】ワクチン2回接種者のブレイクスルー感染者数ワクチン2回接種者(ブースター接種なし、年齢16〜59歳)10万人当たりのブレイクスルー感染者数(●の中の数字が感染者数)

さらに、ブレイクスルー感染の中身を見ると、ワクチン接種完了時から時間が経っている人ほど感染しやすく、逆に接種後の時間が短い人ほど感染しにくい傾向が明らかに見られます。つまり、当初高かったワクチンの感染予防効果が時間とともに明らかに低下していて、そのためにブレイクスルー感染の回数が大きく増えていることがわかります。

そしてブレイクスルー感染による重症者も一部出ています。これだけを見ると、かなり心配な状況のように見えます。

ところが、同じ8月11日のイスラエル保健省のデータをさらに良く見てみると、これまで見えていなかったことが見えてきます。それは、ブレイクスルー感染の頻度が実は思っていたほどは高くないということです。

上記の保健省のデータでは1月24日から8月8日の週までに起きたブレイクスルー感染の回数と人口10万人あたりの頻度が2回目に接種をした月ごとに示されています。それを見ると、8月1日からの1週間でブレイクスルー感染を起こしたのは10万人あたり1226人、つまり1%ぐらい、多くてもおそらく一桁台の低い頻度なのです。

つまり、前述したクラスター感染の場合のように、感染者を分母にするとブレイクスルー感染の割合は高くなるのですが、2回接種者を分母とするとブレイクスルー感染の割合はぐんと低いことがわかります。

確かに数ヵ月前と比べると、ブレイクスルー感染の頻度は何倍かに増えているものの、それでもワクチン2回接種をした人の大部分は感染していないのです。

しかも、ワクチンの重症化予防率を見ると、デルタ変異株が流行しているにもかかわらず、前述のごとく、依然として80%台の後半から90%台という非常に高い有効率を示しています(https://doi.org/10.1101/2021.08.24.21262423)。つまり、反ワクチン派のいうような状態にはなっていません。

感染者を分母としたときにはブレイクスルー感染の頻度は非常に高いように見えるものの、ワクチン2回接種者を分母として見るとそのほとんどは感染していないということになります。

これは、ちょうど1枚の絵の全体を見るか、それとも部分だけを見るかというような違いです。どこを見るかで得られる印象が全く異なるのです。部分だけにとらわれずに、全体をじっくりと見ることです。すると、正しい全体像がやがて見えてきます。

同様のことが8月末にオランダのグループから投稿された査読前論文(https://www.medrxiv.org/content/10.1101/2021.08.20.21262158v1)でも報告されています。

オランダで流行しているのはデルタ変異株で、デルタ変異株流行とともにブレイクスルー感染が目立つようになってきました。しかし、コロナ治療に関わる医療従事者でワクチン2回接種者2万4706人(平均年齢は25.5歳で、91%が50歳以下)のうちブレイクスルー感染が見られたのは161人で、その頻度は0.65%と、100人に1人以下、逆に言うと、ワクチン2回接種をした100人中のうち少なくとも99人は感染しなかったのです。また、感染した人たちは全員軽症で、重症化した人はいませんでした。

さらに、感染者でPCR検査をすると、ワクチン接種者と非接種者の間でCt値(PCR反応で陽性と判断したときの増幅サイクル数。ウイルスRNA量が多いほどCt値が小さくなる)には有意な差はなかったのですが、感染性ウイルスの検出率はワクチン非接種者に比べてワクチン接種者では明らかに低く、ワクチン2回接種により感染性ウイルスを排出することが抑えられていることがわかりました。

ワクチン接種者では粘膜面でIgA抗体やIgG抗体が出来ているので、気道でウイルスが抗体により包まれ、そのために感染性が落ちていたのかもしれません。

さらに、アメリカ・カリフォルニア州の医療従事者でも、ブレイクスルー感染が起きてもその頻度が非常に低いことが報告されています(https://www.nejm.org/doi/10.1056/NEJMc2112981)。この地域ではデルタ変異株の流行が増えて医療従事者におけるブレイクスルー感染も増加したのですが、その頻度は0.57%と、100人に1人以下でした。

このように、感染者だけに注目をすると、ブレイクスルー感染を起こす人の割合が世界各国で増えていることは確かですが、一方で、ワクチン2回接種者を分母にとってブレイクスルー感染の割合を計算してみると、その割合は、実際は一桁、多くても100人に数人以内というのが多くの国で見られていることです。

そして、普段から感染防御対策をしっかり取っている医療従事者ではその頻度はさらに一桁低く、1000人に数人程度です。

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