2021.10.06
# ウイルス

ブレイクスルー感染、日本はイスラエルの二の舞になるのか?

データからわかった意外な「真実」
宮坂 昌之 プロフィール

社会的規制の解除とデルタ変異株の流行

感染爆発を招いた要因は2つあります。前述した各種規制の解除とデルタ変異株(インド型変異株)のまん延です。

6月1日、イスラエル保健省は、同国内に新型コロナウイルスに関する各種規制のほぼ全てを解除しました。それまでは、コンサート会場などの施設などへの入場に際し、ワクチン接種証明を求めたり、職場などにおいて収容人員を規制し、ソーシャルディスタンスを求めたりしていたのですが、これらの規制をすべてやめてしまったのです。

当時の感染状況を考えると、規制当局が感染はほぼ収束したと判断したのも無理からぬことでした。イスラエルでは、ピーク時には1万人を超えていた新規感染者数が、5月23日はわずか12人にまで減少、重症患者数はピーク時に1228人だったものが59人まで減少していました。実効再生産指数も1を切っており、感染が再拡大する兆しはありませんでした。

その間、ワクチン接種は粛々と進められ、5月23日時点では、70歳以上の高齢者は90%以上が2回接種済み、接種が最も遅れて始まった20代でも77%が1回目の接種を終えていました。全国民の58.5%が1回目、55.0%が2回目の接種を完了していたのです。

また、イギリスではワクチンの2回接種がデルタ変異株の発症予防にも有効であることが医学情報のトップジャーナルのひとつ『New England Journal of Medicine』の7月21日号オンライン版(https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa2108891)に発表されています。

それによると、ファイザー製ワクチンを2回接種した場合、発症予防効果は、アルファ変異株で93 .7%、デルタ変異株で88.0%という数字でした(『新型コロナワクチン 本当の「真実』でもこのデータを紹介しています)。

ただし、このデータは、イギリスがまださまざまな社会的制限の解除をする前のものです。少なくともその時点では、ワクチン2回接種の効果は、武漢株の発症予防効果94%にはやや劣るものの、デルタ変異株に対しても有効率が高く、十分に発症を予防できていたことを示しています。

重症化予防効果は相変わらず高い

しかし、イスラエルではデルタ変異株が国内に入るとともに、新規感染者が再び急増しました。そして、ワクチンを2回接種したにもかかわらず感染してしまう「ブレイクスルー感染」が相次いだのです。一時は新規感染者の半分ぐらいがワクチン2回接種者、つまりブレイクスルー感染であるとも報道されました。

【写真】ブースター接種を受ける人イスラエルでは、感染者の増加にともない、ワクチンの追加接種を受ける人が見られるようになった photo by gettyimages

さらに、一部の新聞報道では、デルタ変異株で88%近くあると思われていた感染予防効果が5割を切るかもしれないとのことでした。これらのことから、反ワクチン派の人たちは「イスラエルではブレイクスルー感染が頻発してワクチン効果がほとんど見られていない。やはりワクチンは効かない」と繰り返し発言しています。

しかし、一方で、8月末のイスラエルからの疫学データを見ると、ファイザー製ワクチンの重症化予防率は60歳代以上で86%、40~59歳では94%とのことなので(https://doi.org/10.1101/2021.08.24.21262423)、感染予防効果はかなり下がりつつあるものの、重症予防効果はかなり高いレベルで保たれていることがわかります。

そうなると、イスラエルでは実際のところ何が起きているのでしょうか? 本当の「真実」を知りたいものです。

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