多くの人が知らない…“コロナ治療薬開発”のウラで起きていた「ヤバい経済事件」の「その後」

伊藤 博敏 プロフィール

「スタート時から要注意銘柄」

スタート時から怪しさ満載だった。

発表の翌日には、鳩山由紀夫元首相、バラク・オバマ元大統領を発起人に、「国際新型コロナウイルス細胞治療研究会」なる真偽不明の研究会が立ち上がった。以降も、メキシコ治験を含めて株価刺激策が繰り返され、金融庁関係者によれば、スタート時から「要注意銘柄」になったという。

しかし、材料を出し尽くせば落ちるのも早い。年末までにメキシコでの治験の失敗が明らかとなり、事業パートナーとして治験を担当したセネジェニックスジャパン(セネ社)と決裂した。

セネ社代表は元厚労省官僚で医師の藤森徹也氏。藤森氏は前述した弁護士事務所のヒアリングに応じておらず、虚偽IRへの関与は判然としていないが、専門家である以上、責任は免れない。

メキシコでの治験だけでなく、第三者割当増資による資金調達(延期を繰り返したあげく失敗)など、連続して打つIRはことごとく投資家の期待を裏切るもので、株価は暴落。反発した投資家などから証券監視委、東証、捜査当局などへの告発が相次いだ。

こうした流れを受けて、証券監視委と捜査2課は、金商法違反で捜査着手したのである。

ただ、インサイダー摘発で問題視しているのは、4月27日、コロナ治療薬の開発に着手してからの株価刺激策ではなく、その重要事項発表前に株を仕入れ、売り抜けた関係者に対するものだという。

 

株の移動は…

テラは、東京大学医科学研究所の矢崎雄一郎氏が創業、大学発ベンチャーとして期待を集めたものの、看板の樹状細胞ワクチン療法の商業化がうまく行かずに低迷。借金が嵩み、その影響もあって矢崎氏が不透明取引に手を染めて代表を解任され、経営を受け継いだのが元民主党代議士の平智之氏だった。

このテラに着目したのが、医療コンサルタントで藤森氏の医療法人再建に乗り出していた竹森郁氏だった。

竹森氏が捻り出したスキームは、セネ社とその周辺人脈で矢崎氏や大株主が持つテラ株を購入、「メキシコでのコロナ治療薬の治験」がアナウンスされれば、株価の高騰が見込まれるので、それで矢崎氏らテラの既存株主は負債を清算、同時にテラは業績低迷から脱却、藤森、竹森の両氏は、テラとの共存共栄を図れる、というものだった。

株は、4月27日の前後、大きく移動する。大量保有報告書によれば、矢崎氏は4月1日に88万株(1株110円)、5月1日に60万株(1株377円)を内田建設(横浜市)に売却。テラ株の第三者割当増資を17年に引き受けて245万株を保有していた投資ファンドのレオス・キャピタルワークスは、4月27日に約半分の122万株(1株151円)をセネ社に売却、残りは6月末までに市場処分している。この前後を含めたテラ株の移動にインサイダー取引が発生しているのかについて竹森氏は「公表されているものに問題はありません」と、明言する。

「金商法166条6項は、重要事項の公表前に互いがその事実を知った上で相対取引する行為を、インサイダー取引の適用除外と定めています。『クロクロ取引』と呼ばれるものです。当局が問題視しているのは、『クロクロ取引』以外で4月27日以前に重要事項を入手、市場で売買した人たちです」

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