2021.10.01
# 宇宙科学

「エイリアンの宇宙船」とも言われた、ナゾ多き「恒星間天体」の正体がようやく見えてきた…!

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先入観を排し証拠に向き合った2人の理論家

発見から1年あまりが経過すると、オウムアムアに関する研究は、ほぼ出そろいました。

しかし、一部の謎を説明できても、全ての謎を説明できる説はありませんでした。そんな中、新研究が、2021年3月に発表されました。研究チームは、アメリカ・アリゾナ州立大学の理論家、スティーブン・デッシュさんとアラン・ジャクソンさん。太陽系のような惑星系がどのように作られるのかを、理論から解明している宇宙物理学者です。2人はまるで探偵のようにオウムアムアが残していった証拠を集め、その正体に迫っていきました。

2021年3月に発表された新しい説を唱えるスティーブン・デッシュ教授(アリゾナ州立大学)/NHK提供
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共同研究者のアラン・ジャクソン博士は、オウムアムアの形をせっけんに例えて説明してくれた/NHK提供
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ロケット? それとも、使い古しの石けん?

まず取りかかったのは、オウムアムアについて言われてきたことの見直しです。

例えばオウムアムアの形は発見当初、極端に細長いロケットのような形とされました。これは、小惑星の多くが細長い形、という先入観に若干影響されていたのかも知れません。探査機が近くから撮影した小惑星のいくつか(イトカワやエロスなど)は、確かに少し細長い形をしています。

しかし、オウムアムアで観測された明るさの大きな変化は、ロケットのような細長い形状だけではなく、使い古した石けんのような平べったい形状でも説明できると、一部では指摘されていました。

さらに、太陽の光をどの程度反射するのかを示す値・アルベドが、オウムアムアでは0.04――太陽光の4%だけを反射する――と言われていました。これは色が似ている小惑星の値を便宜的に当てはめたものでした。恒星間天体も太陽系の小惑星に似ているはずだという先入観が、いつの間にか入り込んでいたわけです。

「太陽系の小天体と似ていない可能性もある」と考えた2人の理論家は、さまざまな種類の氷の塊をオウムアムアの位置に置いたときに何が起こるのかを、理論から探ることにしました。この計算には、前出のアルベドが重要な役割を果たします。アルベドの値によって太陽光の吸収率が変わり、氷の蒸発しやすさも変わるからです。

2人はアルベドを自由に変えられるようにプログラムを作り、水、二酸化炭素、窒素、メタン、一酸化炭素などさまざまな物質の氷が、さまざまなアルベドのときに、どの程度ガス化するのかを計算しました。

すると、揮発性の高い窒素やメタン、一酸化炭素の氷の塊なら、観測と合う場合があることが分かりました。例えば窒素の氷なら、アルベドが0.1か0.64のときに観測と合うガスの噴出(つまりロケット効果)が起きるのです。このアルベドの値を目の当たりにした2人は、数年前に「ある宇宙ミッション」がもたらした観測結果を思い出します。

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