史上初の恒星間天体オウムアムアの素顔
新天体は、太陽に最接近し、遠ざかっていくタイミングで見つかったため、時間とともに暗くなっていく一方でした。一刻の猶予も許されない中、ハワイやカナリア諸島、チリなどの巨大望遠鏡が、緊急観測を行いました。

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すると、彗星のような氷を多く含む天体で見られる“ガスの噴出”が全く見られないこと、明るさが周期的に10倍も変化することなど、想定外の観測結果が次々に得られました。発見から1か月後、新天体はハワイの言葉で「初めて遠方からきたもの」を意味する「オウムアウア」と名付けられ、「岩石か金属でできたロケットのような不思議な形の物体だろう」と発表されました。史上初の恒星間天体は、太陽系のどんな天体にも似ていない、不思議な姿をしていたのです。

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相次ぐ想定外に“エイリアンの乗り物”説が登場
新天体が恒星間天体だと最初に気づいた若手の1人、イタリアのマルコ・ミケーリさんは、多くの謎を残して飛び去っていったオウムアムアを、独自の視点から見つめていました。

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世界中の望遠鏡の観測結果を取り寄せ、毎日の位置の変化を追い続けていたのです。すると、計算から予想される軌道と、実際に観測された位置が、少しずつずれていくことがわかりました。
そして太陽重力と反対向きの力が存在すると仮定すれば、ずれを説明できると気づいたのです。人類が持つ最高の望遠鏡・ハッブル宇宙望遠鏡を使った検証を経て、2018年には、オウムアムアに太陽重力と反対向きの力が働いていることが明らかになりました。

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彗星が同様の力を受けていることは以前から知られていました。太陽に照らされた面で氷が勢いよく蒸発すると、ガスが太陽向きに噴出されることになり、その反動で太陽と反対向きの力を受けるからだと解釈され、ロケット効果と呼ばれることもあります。
しかし、ガスの噴出が全く見られなかったオウムアムアで、このロケット効果が働いたとは考えられません。そこで、自然現象で説明することを諦め、「オウムアムアはエイリアンが作った宇宙船だろう」と主張する科学者すら登場することになりました。