「妻が、子供が欲しいなんて言いやがった」DINKsを悩ませる「心変わり」問題

稲田 豊史 プロフィール

“言いやがった”。とは穏やかではない。しかし、それほどまでに花田さんの恨みは深かった。「子供のいない人生」という彼の計画が、すべてご破産になったからだ。

恨みはやがて失望へと変わる。花田さんが玲子さんにベタ惚れした理由は、彼女の文学、哲学、映画や演劇、サブカルチャーといった文化的素養が図抜けていて、都会的・先進的な思想の持ち主だったから。生粋の文化系ボーイである彼にとって、玲子さんは憧れの対象だったのだ。

しかし玲子さんは年齢を重ねるごとに、花田さんが蛇蝎(だかつ)のごとく嫌う「安定志向・保守的な考え方」に染まり、持ち家に固執しはじめ、花田さんが言うところの“平凡な主婦”に変貌していった。彼は心の底から幻滅しこう思ったという。

「なんてダサいんだ…」

『ぼくたちの離婚』より
 

男は『ONE PIECE』をずっと買い続ける

統計を取ったわけではないが、「変わったのは君であって、僕ではない。だから僕は悪くない」は、離婚係争中夫婦の夫が言いがち発言ベスト3に入るように思う。科学的エビデンスが心もとない男女脳の話を持ち出すのは気が引けるが、「女は環境に応じて自らを変化させるが、男の精神性は基本的に変わらない」ことに納得する方は多いのではないか。

女性は人生のさまざまなフェーズ、環境の変化に応じて、趣味や生活習慣をどんどん変えていく。結婚すれば経済観念が強化され、子供ができれば優先順位は夫から子供に切り替わる。出産によって身体が変化することも大きいだろうが、女性のほうが明らかに「適応力が高い」と感じざるをえない。

しかし、男性は結婚しても独身時代と同じように友人と飲みたがる。趣味のスニーカーや時計を集めたがるし、『ONE PIECE』をずっと買い続けるし、いつまでもゲームやパチンコやスロットに興じ続ける。

結果、男は女の変化に苛立ち、女は男が変化しないことに苛立つ。別の言い方をするなら、女は自分のスピードに並走する努力をしてくれない男に腹を立てる。花田さん夫妻のケースで言えば、花田さんは玲子さんの人生観が大きく変化したことを「裏切り」と捉え、玲子さんは年月を経て変化した自分の心境を受け入れてくれない花田さんに不信感を募らせた(と推察される)。

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